ボールを手に力走するヤマハ発動機のキャプテン、FL三村勇飛丸(撮影:松本かおり)
<第52回 日本選手権 決勝>
ヤマハ発動機 15-3 サントリー
(2015年2月28日/東京・秩父宮ラグビー場)
相手が反則を犯した密集から、クラブ自慢の職人がぬっ、と、起き上がる。傷ついた顔をほころばせる。ヤマハは持ち前の守備でかように魅せ、サントリーの複層的陣形攻撃を黙らせた。チーム史上初の優勝である。
後半10分頃。SHフーリー・デュプレアらサントリーは、自陣から規律に即し攻める。FL佐々木隆道は「攻めれば、取れる」。着実に前進する。敵陣に入ると、日本代表のCTB松島幸太朗がさらにランを仕掛ける。波に乗るか。否。笛が鳴った。
攻める側の援護より、守る側のそれが速かった。絡んでいたのは、ヤマハのFL三村勇飛丸主将。ぬっ、と、立った。簡潔な言葉で、この折の心境を明かすのだった。
「どうにか、球出しを遅らせる」
さかのぼって前半7分には、引き下がる相手をも掴んで押し込むモール、SO大田尾竜彦による「外(の選手)がかぶり気味(やや極端に前に出る)の守備」の死角を突いたパスなどで先制。以後は相手の中心部に圧力をかけるスクラムも活かし、リードを保った。各所で自分たちのスタイルを示しての戴冠。かつてサントリーを率いた就任4年目の清宮克幸監督は、「一仕事、終えた」と破顔した。
(文:向 風見也)