(写真はトップリーグ準決勝、東芝戦に勝ったあと/撮影:松本かおり)
2季連続2冠を狙ったパナソニックのシーズンが終わった。22日、大阪・近鉄花園ラグビー場。今年度の日本最高峰のトップリーグ(TL)王者として臨んだ日本選手権準決勝で、同5位のサントリーに25-31で敗れた。
シーズンを締めくくる大会では昨季に続く優勝を逃し、ロビー・ディーンズ監督は「非常に残念な結果だったが、選手のパフォーマンスを誇りに思う」と気丈に振舞っていた。
SOベリック・バーンズのキック力を活かして敵陣に入る戦法が売りだったが、「キッキングゲームに関しては、やりたいようにはできなかった」。要所でボールを失う場面が多く、自陣からの脱出が叶わぬ場面が多かったか。指揮官は「ゲームの強度が高く、ビッグヒットを浴びたところでミスが出た」と続け、ゲーム主将のNO8ホラニ龍コリニアシは潔かった。
「監督の言うとおり。コンタクトゾーンで1枚、サントリーさんが上手でした」
TL優勝に大きく貢献したHO堀江翔太主将は怪我で、SH田中史朗副将とWTB山田章仁は南半球最高峰のスーパーラグビー挑戦のため、それぞれ欠場。メンバー変更による影響を問われると、シーズン開幕から若手を積極起用していたディーンズ監督は「誰がいないから、ではなく、誰がいるからこういうラグビーを、と考えている。出場した3人は、自らその権利を獲得した。代わりではない」と否定した。「リーグ戦とはまったく違う(負けたらシーズンが終了する)状況で、よくやってくれた」とも重ねた。
もっとも、クラブの看板である守備網を統率するCTB林泰基は、「どのメンバーが出てもやれるようにしてきたので言いたくはないけど、(今回の準決勝では)よく喋れる人間がピッチにいなかった」。主力格の欠場により、的確なプレー選択を支えるコミュニケーションが薄らいだと見るのだ。
「皆、能力自体は高いんです。ただ、状況に応じた対応力とかゲーム理解度の部分で、若干、噛み合わなかったのかな、と。そういう状況になると想定してきたので、負けたのは(もともとレギュラーだった)12人の責任です」
さらに根本的な問題点を挙げるのは、FL西原忠佑だった。HO堀江主将らの欠場による影響も「喋らないでもわかる阿吽の呼吸のようなものが、少しずつずれていた」と認めつつ、「メンタル的に成長しなければならない選手が多いのかな」とも言った。シーズン中こそ選手層の拡張に手応えを掴んでいたが、日本選手権を前にしたクラブの雰囲気には首を傾げてしまった。TLで喫した3敗の要因、TLの上位4強入りを逃したサントリーの精神状態を踏まえ、こう指摘した。
「試合には、練習でやったことしか出ない。練習で、準備ができていなかった。今季、負けている試合はモチベーション(の大小による影響)があった。正直、去年の日本選手権では必死に2冠を取りに行ったけど、今年は…。逆に、サントリーは(上位4強による)プレーオフに出られなくて、(リーグ戦で)僕らに負けていて、モチベーションは高い。その部分の差は大きかったかなと思います」
捲土重来はなるか、ディーンズ監督はこう語るのみだ。
「我々が2冠を逃したことは、日本のラグビー全体のレベルが上がっていることの裏づけです。今季の収穫は、いままで公式戦に出るチャンスのなかった選手が、力をつけて試合に出たことです」