ラグビーリパブリック

伏見工・高崎利明GMインタビュー

2015.02.05

 全国優勝4回のラグビー部を持つ京都市立伏見工業高校が、同じく市立の洛陽工業高校と統合され2016年4月に新設高校としてスタートする。
 その校名の一般公募が先月23日に締め切られた。
 発表は3月末となるが、(1)工業の名称は使わない、そして原則として(2)両方の校名は残さない、ということになっている。
 テレビドラマ「スクール★ウォーズ」(以下SW)のモデル校だった「伏見工」の名前が消える公算が高い中、同校教頭でラグビー部前監督でもある高崎利明氏(現ラグビー部GM)に今の思いを聞いてみた。

 一部新聞の報道が校名変更騒ぎのスタートでした。

「いきなり『伏見工が消える』、『SWの学校』と書かれました。SWの影響でラグビー部自体は名前が憶えてもらえた。それは嫌ではなかったが、一般的にはガラスが割られたり、バイクが走っている校内暴力のイメージでとらえられてきた部分があった。それを変えようと『脱SW』でやってきました。報道時は校名を残す努力も水面下でしていました。なのにどういう高校になるのか、学校にも市教育委員会にも取材に来ず、第三者からの取材のみで書かれたので私は怒りました」

 学校が消えるのではないのですか。

「学校は消えません。校名が変わるだけです。ただし、これまでの工業高校ではなくなります。新校は現状に則した新しい学校になります。イメージとしては理数系普通科。センター試験への対応コースもあります。これまでの『工業=男臭い』という感じではなくなります」

 校名の公募はどうでしたか。

「500件ほど集まったと聞いています。多いのは『伏見高校』。SWの影響で『川浜高校』というのもありました。校名は多数決で決めません。恣意的な組織票を防ぐためです。あくまでも参考として市教育委員会が最終決定します」

 「伏見」という名前が残る可能性もわずかながらある、と聞いていますが。

「新校は同じ伏見区にあって(深草西出山町、立命館高校の跡地、伏見工から徒歩25分)、近くには世界的な観光地でもある伏見稲荷が存在する。ラグビー部は全国に名が知れ渡っています。地域との連携を考える上でも『伏見』の名前をつけるのは妥当、という考え方もある。一方でSWのイメージは『荒れている』、『偏差値が低い』などであり、新校としてはそれを消し去りたい思いもあります。今回の合併は少子化の流れの中、工業の生き残りをかけたものです。だから校名は慎重に考えていくべきだと思っています」

 「伏見」という名前が消えれば、これまで実績を重ねてきたラグビー部にとってはデメリットなのではありませんか。

「それはあるかもしれません。でもね、ラグビー部はあくまでも学校の中の1クラブです。学校が残って、はじめてクラブも残る。クラブありき、ではありません。学校が統合によって、新校となり、新しい歴史を作って少子化や私学偏重の世の中を生き残ろうとしています。そのことをプラス思考で考えないといけません。SWの時代にしがみついていたらアカンのです」

 ラグビー部自体は名前を残す努力をしていると聞いています。

「そうです。3年前にラグビースクールなどを運営するNPO法人『伏見クラブ』を立ち上げました。関東でいう『ワセダクラブ』のようなものです。OBの坪井(=一剛、同志社大→NTT関西)が代表理事になって活動してくれています。今はクラブチームの全国大会参加は無理ですが、少子化の影響でそのうち門戸が開かれるかもしれません。そうなれば新校の部活動に伏見クラブが合流できる可能性が出てくる。その時に○○高校伏見クラブとなればいい。新校で名前が残らなくとも、将来的に学校とクラブチームとの兼ね合いをうまく利用していけば、残していけるかもしれません」

 名前が変わることにこだわりはないのですね。

「そりゃ本心は残したいですよ。でも新校の半分は洛陽工なんですよ。元々伏見工は洛陽工から分かれたものです(1920年、分教場として学校創立される)。そういう歴史的背景も見るとゴリ押しはできません。仮にそれをやって名前を残したところで、新校や教育委員会と意見の相違があれば、今後サポートを受けられない。あくまでも学校ありき、なのです」

 教育委員会などからは新校での支援を約束してもらったようですね。

「はい。十分すぎるくらいにね。グラウンドは大学6連覇の帝京大と同じ人工芝が入ります。ウエイトルームの器具はトップリーグ、神戸製鋼が使っているもので統一。入札にせず、我々の要望を聞いてもらえました。こんな立派な設備を持てる公立高校は日本にはないはずです。何度も言うようにクラブ活動はあくまで学校があってのものです。名前は残ったけど、ラグビー部のスタッフは異動でバラバラになったり、グラウンドすらなくなれば意味がありません。新校ではこれまでの伏見工の歴史に、新しいキャリアを上乗せしていきます。私はGMとして今まで以上のラグビー部にしていくつもりです。全国のみなさんにはこれまで同様に応援してもらえれば本当にありがたいですね」

(取材、構成:鎮 勝也)
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