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母校・帝京大のV6へエール送るサントリーの中村 自身は大一番で初先発へ

2015.01.09

Nakamura

NTTコム戦でプレーするサントリーの中村亮土。プレーオフ進出をかけた最終節は先発
(撮影:松本かおり)

 学生王者を決める大学選手権の決勝戦が10日、東京・味の素スタジアムでおこなわれる。筑波大との一戦で6連覇を狙う帝京大にエールを送るのは、サントリーのCTB中村亮土。同大の前年度主将である。自らも4強入りを目指す現所属先で、吹っ切れた様子を覗かせた。

 3日、東京・秩父宮ラグビー場。日本最高峰トップリーグ(TL)のセカンドステージ第6節(対 NTTコム/○18-17)に、後半1分から出場した日だった。

 負けることなど、ありえないと思っているのでは。

 自身の学生時代と同じく下馬評有利とされる後輩たちについて聞かれ、CTB中村は苦笑した。

「どうですかね…。周りの方には結構、そう言われるんですけど。勝負事なので、何が起こるかわからない。今年は一歩引いた状態で(帝京大の試合を)観ていますけど、自分たちのプレーをやってくれればいいと思います」

 順風満帆であろう帝京大と比べ、自身はサントリーで逆境に立たされてきた。夏場の練習試合ではパスをもらえば相手のタックルで仰向けになり、TLの序盤戦では出場が叶わなかった。春先まで選ばれていた日本代表からも、秋には、外れた。

「あまり持ち味が出せていなかった…。上手くやろうとし過ぎた部分が、あったかもしれないですね。また、チームの層の厚さが、自分のパフォーマンスがいいからといって出られるレベルではないし」

 もっともメンバー入りを果たせぬ頃から、大久保直弥監督には苦悩のさまを好意的に捉えられていた。

「例えば(大学ラグビー界で)帝京大のFWは8対2で勝ってしまう。ただ(TLで)サントリーのFWはそうはいかない。(その攻防を経て球をもらうBK陣には)いつもプレッシャーのなかでのスキル、判断が求められる。亮土に必要なのは、(学生時代と違う状況に慣れる)時間だけです。必死にもがいているといえば、もがいている状態ですね」

 かねてから激しい肉弾戦が得意な帝京大の、絶対的な顔だった。「もがいている状態」を経て、思考回路を明確にできた。「上手く見せる」よりも「シンプル」に戦い、その延長線上で「いい判断」を下す…。身長178センチ、体重92キロという体躯で、こう胸を張る。

「自分の持ち味。いまは12番(インサイドCTB)で出ることが多いのですけど、フィジカルな、相手に強いプレーを見せて欲しいと言われている」

 周りが相手に圧倒した後にプレーできた帝京大時代と、運動量をベースに「浅く、フラットなライン」で攻めるサントリーでのプレーとのギャップ。これも、自分なりの工夫で克服しつつある。

「細かいことですけど、(以前は)ボールをもらう前に自分と相手との間合いを見ていないところがあった。いまは速めに(球を)もらったりして、自分のなかに余裕を作るようになった。それで、いい判断ができるようになった」

 大学選手権決勝の翌日、チームは愛知・瑞穂ラグビー場でトヨタ自動車とのセカンドステージ最終節に挑む。現在、勝点は21で5位。4位のヤマハは勝点22だ。サントリーが4強入りするには勝点5の獲得、つまりは4トライを挙げての白星が必須となる。

「いまは第一線のメンバーじゃない。ただ、いつでもそうなる準備をしている」とは、これまで4試合の途中出場を果たしたCTB中村。大一番で、今季初先発を果たす。

(文:向 風見也)

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