タイガージャージーがスタジアムを沸かせることも少なくなかった。
特に序盤、勢いにのっていたのはチャレンジャーの方だ。スクラムを何度も押し込んだ。激しいタックルを連発。前半17分にPGを決め、31分にはNO8森川翼がトライ(コンバージョンも成功)を奪った。しかし前半は26-10と帝京大がリードし、80分経ったときのスコアは53-10。後半、慶大の得点が動くことはなかった。
1月2日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた全国大学選手権の準決勝(第2試合)で帝京大が慶大に勝ち、ファイナルへの進出を決めた。6連覇へ王手をかけた王者は、岩出雅之監督が「ロッカールームを出て行くときは気合いが入っていたが、やさしい、怖さのないプレーをしていたかな」と話したように、試合開始直後から相手を圧倒し続けることはなかった。しかし挑戦者の気迫に飲み込まれることなく、落ち着いてスコアを広げていった。
SO松田力也の冷静な判断が、王者をいつものペースで走らせる要因となった。適所へのキック。相手の圧力を分散させる自らの仕掛け。そのおかげで慶大は、前へ出られたかと思えば後ろに走らされた。好タックルもボール奪取につながらなかった。
FL杉永亮太、CTB金田瑛司、WTB尾崎晟也らも、いい働きを見せた。昨シーズンの12月以来戦列に復帰し、万全とはいかなかったCTB権裕人をカバーするかのように、幅広く動き、前へ出た。チーム力の高さを感じさせた。SH流大主将は決勝戦に向けて、「筑波大の強みはブレイクダウンだと思います。そこに真っ向勝負を挑みたい。そして、ボールをダイナミックに動かす自分たちのラグビーをやりたい」と語った。
昨年も同じ準決勝で対戦した両チーム。そのときは45-14で帝京大が勝ち、今回はそのときより点差が広がる結果となった。しかし和田康二監督は、「対抗できるところ、やれることは増えたと感じる内容でした」と選手たちの頑張りを評価した。
シーズンを通して10番を背負ってきた矢川智基を前戦で負った骨折により欠き、いつもはCTBの石橋拓也を司令塔に起用したこの日。タックル力とリアクションスピードの高い選手をメンバーに並べ、やり合えたところも少なくなかった。それだけに、選手たちは大きく開いた点差が納得できない。FL木原健裕主将は「脳しんとうで記憶がないのですが、みんなよく体を張ってくれた。日本選手権で…」と話し、シーズン最後まで成長し続ける意欲を示した。