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荒尾×新潟工はシーソーゲーム 逆転劇に敗者は「無意識のなかの意識緩んだ」

2014.12.28

Niigata

最後までもつれた荒尾(黄ジャージー)と新潟工の試合(撮影:松本かおり)

 精神状態の変化が、試合展開にそのまま直結したか。

 熊本・荒尾高(2年ぶり7回目出場)は後半5分、新潟・新潟工高(11年連続39回目出場)とのシーソーゲームで10点リードを奪う。敵陣22メートルエリア右中間から、SO村本和輝がキックパスを放つ。がら空きだった左大外のスペースで、WTB宮前将太が悠々グラウンディング。直後のゴールも決めた。徳井清明監督は念じる。

「緩むなよ。気持ち、緩めるなよ」

 当事者の心境は、その逆だったか。LO木庭拓海主将は振り返るのだった。

「勝てる雰囲気があって、それがまずかったなと思います」

 28日、大阪・近鉄花園ラグビー場第1グラウンド。全国高校ラグビー大会の1回戦で、新潟工高が荒尾高に33−22で勝利。勝者は劣勢時に持ち味を発揮し、後半20分に逆転した。

 荒尾高は自在に攻めた。大きく球を動かし、タッチライン際を切り裂く。前半2分、6分とWTB大原壮真が続けてトライを奪う。10点を先行した。

 対する新潟工は10分、敵陣中盤で球を受けたSO小林大也の右隣をCTB五十嵐壮平がサポート。タックルを受けるSO小林の真横をCTB五十嵐がすり抜け、そのままインゴールを割った。ゴール成功もあり、7−10。続く18分には、敵陣ゴール前右のラインアウトから鍛え上げたモールを押し込む。身長157センチのFL鷲尾裕也が止めを刺し、12−10と逆転した。

 荒尾高は前半25分に再逆転し、後半5分のキックパスからの得点で大きくリード。ただ、ピッチサイドの徳井監督は気が気ではなかった。

 本来はキックで陣地を確保しながら試合を進めたかったが、部員たちはパスとランを多用している。指揮官は「ちょっと、イケイケになっている」と危惧した。

「多少、外でゲインをしても、ゴールラインを越えなきゃ意味がないのに。先にぽん、ぽん、と取ってしまって、勘違いをしたんでしょう…」

 悪い予感は的中する。大きなリードを奪った後半5分以降は「プレー、軽くなりましたね」と指揮官。LO木場主将も「ブレイクダウン(接点)での寄りが遅くなった」と、細部でのほころびを認めるしかない。相手の猛追撃を真に受けた。

 12−22とされた新潟工高は、「FWがボールを渡さないことで、向こうの形を出させないようにした」。樋口猛監督の心境である。

「これは厳しいかな、とも思いましたが、通用している部分はあった。ボールキープするなかで突破口を開ければ、と」

 7分、連続攻撃からFB澤田尚希がダンスの走りを繰り出す。直後のコンバージョン成功で19−22と追い上げた。

 点差を詰められた荒尾高のLO木場主将は「少し焦りがあって…。切り替えられれば良かった」。攻め込んでからの落球でチャンスを失う。

 20分、敵陣22メートル線付近。新潟工がモールを作る。組めば押せるとの手応えは、前半のスコアで掴んでいた。「意地でも組む」という樋口監督の思いを、選手たちは具現化した。ゴール前まで突き進む。最後尾のFL鷲尾がその脇を突っ切る。最後は、PR内藤勝也が勝ち越す。ゴール成功もあり、得点板は「26−22」と光った。

 残り10分。さらなるどんでん返しを狙った荒尾高だったが、27分にだめを押された。敗れた徳井監督はこうだ。メンタルがスキルを変質させうると言いたげだった。

「選手の無意識のなかの意識が、緩んだと思うんです。いつも僕が使う言葉でいうと、いい気になった。それがミスに繋がったかなと。基本に忠実に、シンプルにやっていかなきゃいけなかったんですけど…」

 樋口監督が「お互いに力を出した素晴らしいゲームでした」と喜ぶ新潟工高は、30日に京都・京都成章高(3年ぶり7回目出場)と2回戦をおこなう。「自分たちの持っているものをぶつける」と前を向いた。

(文:向 風見也)