緊張していた。直前まで、ずっとその台詞をつぶやいていた。いよいよ場内アナウンスで呼ばれると、「感謝の気持ちだけは伝えよう」と、概ねこんな話をした。
「宣誓! 我々選手一同は、聖地、花園で試合ができることに誇りと喜びを感じ(中略)一生に一度の瞬間を一生の思い出にできるよう、楕円球を追い続けます。大好きなラグビーができることを感謝します!」
27日、大阪・近鉄花園ラグビー場での全国高校ラグビー大会の1日目。開会式での選手宣誓を務めたのは、北北海道・中標津高(8年ぶり7回目出場)のFB竹崎僚太だった。同日の1回戦では、岡山・津山工高(5年ぶり23回目)に36−12で快勝。ノーサイドの笛を聞き、高校から楕円球に触れた仲間たちと喜びを分かち合った。
6日の大阪での組み合わせ抽選会で、「一番やりたくない」はずの選手宣誓を務めることとなった。「最悪だ。でも、もうやるしかない」。家族と相談してスピーチ原稿を作成。道大会時は17人という少人数クラブの1人として、「周りの人への感謝の気持ちを入れた方がいい」と考えた。
「僕たちはチームの人数が少なくて、周りの方にお世話になることが多いので。OBの方に試合形式の練習をしてもらったり。その意味では、試合経験の少なさは、あまり感じないと思います」
複数回の予行演習を経て迎えた当日、整列していた位置から中央のマイクへ向かう折。スタンドに来ていた兄と目が合った。緊張がほぐれた。いたずらっぽく振り返る。
「言葉に詰まっても、(チームメイトに台詞を)後ろから言ってもらえるように覚えてもらいました」
中学までの経験者がいないなか、チームは「走れ」「タックル」を伝統とする。第2グラウンドでの1回戦でも持ち味を発揮し、山口昂希監督は「予定通り」と淡々と振り返る。
そんななかFB竹崎主将は「僕自身はミスってもいい。チームが勝つ方が大事」と、2トライを奪って勝利に貢献した。30日の2回戦では、開会式のあった第1グラウンドで御所実(2年ぶり9回目出場)とぶつかる。高校日本代表候補を4人も擁する優勝候補を向こうに、「小さいミスを修正して、最高の状態で戦いたい」と前を向いた。中学時代は個人競技のスピードスケートをしていたリーダーは、ラグビーの魅力をこう語る。
「全員で、勝てるところです」