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釜石SWがTL昇格へ前進! トップチャレンジ2突破の陰に元サモア主将あり

2014.12.23

Mapsua

クボタ在籍時にもトップリーグ昇格争い経験しているセイララ・マプスア。
釜石シーウェイブスを日本最高峰リーグへ導けるか(撮影:井田新輔)

 殊勲の34歳は、公式記録の「180センチ、106キロ」より大きく映ったか。10点リードで迎えた後半26分には、雷のタックルで相手の用意された攻めを分断する。

「ゲームですごく大事な場面。チームの士気を高めるビッグプレーが必要」

 時間が経てば経つほど、仲間を大きな声で奮い立たせた。その存在を、三浦健博ヘッドコーチも心強く思う。

「チームの推進力になっています。人柄も良く、選手を鼓舞して引っ張っている。加入1年目ですが、フィットしています」

 トップイースト所属の釜石シーウェイブスRFC(釜石SW)は、23日、東京・秩父宮ラグビー場で中国電力に34−24で勝利。ウェスト、キュウシュウを含めた3地域の下部リーグで今季2位だった3チームによる、トップチャレンジ2の最終節だった。

 これでチームは、同1位のクラブが揃うトップチャレンジ1へ進むこととなった。1月12日から25日まであるこの総当たり戦の順位により、日本最高峰のトップリーグに自動昇格するか、同リーグ下位との入替戦に出場するかが決まる。トップチャレンジ1に初挑戦の釜石SWは、悲願達成に向け大きな一歩を踏み出した。

 後半途中にリードを奪われるなど苦しかったこの日、外国人勢が躍動した。なかでもCTBセイララ・マプスアは、フル出場で仲間を先導した。後半2分、持ち前の突破力で守備網を突き破る。ハーフタイム明けから出場し結局2トライ奪取のFBジェームス・カマナに、スコアをプレゼントする。2分前、同点に追いつかれたばかりだった。それだけに、一時的とはいえ22−17とリードを奪ったシーンをこう振り返った。

「重要な場面。スコアされたばかりで、元気がなかった。マストポイント、でした」

 26キャップ(国は同士の真剣勝負への出場数)を取得したサモア代表では、主将も務めたことがある。

「声を出すことも含め、チームに貢献するために自分ができることをしていきたいと思っています」

 クラブにとって今季最大級の大一番でも、自らの哲学を貫いた。22−24と2点差を追う後半10分台も、身体と声を張った。須田康夫主将には「リードしてくれて、非常に助かっています」と感謝された。

「ラグビーはチームスポーツ。きつそうな選手がいたら奮い立たせたい。逆に、自分がきついと思った時に声をかけてもらって頑張れたこともあるから」

 東北地方の暮らしに大打撃を与えた東日本大震災から、3年以上が経つ。かつて日本選手権7連覇を果たした新日鉄釜石が前身の釜石SWは、各所で「復興のシンボル」と位置づけられている。トップリーグチームのクボタから今年度加入したCTBマプスアも、本拠地の岩手県が被災した現実を、肌で感じている。

「釜石の人たちは、このチームをすごく大切にしてくれていると思います。プレーで、幸せになってもらいたい。絶対にトップリーグに上がれるという強い自信を持って、ハードワークしていきたい」

 戦い終える。痣(あざ)のついた顔をほころばせる。握手やサインを求めるファンに日本語で謝辞を重ねていた。

(文:向 風見也)

前半にチーム2本目のトライを挙げた釜石シーウェイブスのFL佐伯悠(撮影:見明亨徳)

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