ラグビーリパブリック

来年は創部40周年 生駒少年ラグビークラブ

2014.12.04

 生駒市は奈良県西部に位置し、境を大阪府に接する。浪速のシンボル、標高642メートルの生駒山を貫くトンネルを近鉄電車で西に抜ければ、近鉄花園ラグビー場をかかえる「ラグビーのまち」東大阪市がある。

 その生駒市に本拠を構えるのが生駒少年ラグビークラブ(RC)である。県内に9つあるラグビースクールの中で一番の歴史がある。創部は1975年(昭和50)。来年(2015年)には創部40年を迎える。「ラグビースクール」ではなく、「ラグビークラブ」の名称にはこだわりがある。
 事務局長の能阿弥(のあみ)照雄は話す。
 「元々、設立時にヨーロッパ型のクラブを目指していたそうです。子どもが主役ではあるが、このクラブに携わる人がすべて楽しめるようにと名付けられたと聞いています」
 2003年には指導員やOBで構成される「生駒クラブ」を創設。クラブ形態を深める。大人たちは子どもたちの前に約1時間の練習を済ませ指導をしている。
 理念は「勝利のみを追求しない」ということもあるが、何よりも「継続」にポイントを置く。
 「一流選手を育てる、とかそんな感じではありません。ただ大人になってもできるだけラグビーを続けてもらいたいのです。いいスポーツだと思いますから」
 「クラブ」の名称はその一環。能阿弥の言葉通り、楕円球を楽しみ、成長できる仕掛けが生駒RCにはある。

 特に小学校低学年には神経系の発達を促進させる練習を採り入れている。
 小学1年のアップはラグビーボールを放り投げたり、体の周囲を回しながら走らせる。ドリブルなども入れる。それが終わればゴム製の野球ボールでお手玉させながらのランなど、使うものを小さくさせ、次第に難易度を高める工夫がなされている。指導員も参加。意外と難しく、うまくできると大人、子どもどちらからも歓声が上がる。

 脳神経のネットワーク化促進のためのコーディネーション(COORDINATION=調整力、巧緻性)を作り上げる中心になるのは指導員、桑田大輔だ。
 「小学生で最も発達する身体的要素は神経です。中学生は持久力。筋力をつけるのは高校に入ってからでも間に合います。だから小学校低学年の内はバランス良い動きや動きのバリエーションを増やすことができるようになる種目を多く入れています」
 46歳の桑田は脳からの指示を筋肉により速く伝えさせるようにするため、ボールに多く触れさす練習を考える。パス、キックなど、選手の技の多彩さにつながるのは、「幼少期のボールタッチの回数が決める」という自説に基づく。
 ラグビーの入り口で理念を保つためにも、桑田をはじめ指導員は知恵をしぼる。

 生駒RCは近鉄ライナーズともその誕生から深いつながりをもっている。
 生駒は近鉄奈良線の主要駅にあたり、古くからラグビー部関係者が多く住まうこともあって、現関西ラグビー協会会長で日本代表キャップ16を持つ坂田好弘が設立を提唱。ラグビー部OBで後に近鉄社長となる田代和が会長に就任するなどした。
 当時からOBや現役が指導にあたり、現在はNO8の佐藤幹夫やGM補佐の木村雅裕らが指導員に名を連ねている。
 佐藤は長男・清正が所属する小学校2年生を教えている。2年目の今年はメインの指導員になった。11月30日の練習には、前日29日のNECグリーンロケッツとのセカンドステージ開幕戦(12−8で勝利)に先発出場したにも関わらず参加した。
 「体はしんどいですけど、教えることはすごく楽しい。子どもは1日で劇的に変わりますから。みんな熱心だし。自分としてはいい切り替えになります」
 能阿弥は「ミキオ効果」を口にする。
 「やっぱり教え方も上手です。ミキオさんの学年はウチのクラブの中での習熟度は一番ですから」
 独創的練習にトップリーガーの指導も加えながら、生駒RCは独自性を出している。

 ジャージーは日本代表の旧ジャージー、白と赤の縞柄を模倣する。ただし赤色は細い。左胸には生駒市の木、「樫」の葉が緑でプリントされている。主なOBにはサントリーサンゴリアスのFB宮本啓希がいる。
 チーム構成はタグ、幼稚園、中学部を含め9。現在は約110人が在籍している。
 毎年4月に開校して3月に修了。毎週日曜日に市内の小学校で2時間の練習をおこなう。毎年6、10月には「スカイ・ウォーク」という市の行事に参加。生駒山に登る。ジャージーを着ての登山は広報的意味合いもある。年初めは市の駅伝大会にも参加する。

 木村親子は6年生に属し、毎週日曜には指導者と教え子になる。長男・圭佑は言う。
「友だちと一緒にラグビーができるのはとても楽しいです。特にトライをした時に一番気分がいいです。『よし』っていう気持ちになります。みんな仲がいいし、練習がない時でも近所に住んでいる友だちと公園でパスしたりしています」
 生駒RSは明るい方向に進んでいる。

(文:鎮 勝也)

練習しているのは6年生チーム。近鉄のヤッケを来ているのがGM補佐の木村雅裕氏。

併設の生駒クラブ。

【筆者プロフィール】
鎮 勝也(しずめ・かつや) スポーツライター。1966年生まれ。大阪府吹田市出身。6歳から大阪ラグビースクールでラグビーを始める。大阪府立摂津高校、立命館大学を卒業。在阪スポーツ新聞2社で内勤、外勤記者をつとめ、フリーになる。プロ、アマ野球とラグビーを中心に取材。著書に「花園が燃えた日」(論創社)、「伝説の剛速球投手 君は山口高志を見たか」(講談社)がある。

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