ラグビーリパブリック

やり切って得るもの。帝京大CTB前原巧、対抗戦全試合出場の充実。

2014.12.01

Maehara

常勝チームの「13番」を背負い続ける前原巧。名前は「こう」と読む。(撮影:長尾亜紀)

 なんくるないさ。
 沖縄の方言。「なんとかなるさ」という意味だ。
 帝京大学の前原巧が、こう教えてくれた。
「あの言葉は一生懸命やった人が、やり尽くした後に使う言葉らしいんです、本当は。高校時代、先生にそう教わりました」
 沖縄・コザ高校出身の4年生。CTBとして体を張る。「のんびりしています。沖縄人っぽいところがあるので」と笑う男は、ラストシーズンを必死で過ごしている。やれることをやり切れば結果はついてくると信じて。

 11月30日、慶應義塾大学に48-0と完封勝ち。今季の関東大学対抗戦を7戦全勝で終え、帝京大学は単独優勝を決めた(優勝は前戦で決定していた)。前原は今シーズンの7試合すべてに出場し、6試合で先発。昨季は先発出場が一度もなかったから、今季の飛躍は、チーム内で信頼を得た証拠と言っていいだろう。
 本人は「まだまだ周囲に助けてもらっています。もっとチームに貢献できるように頑張りたい」と話した後、今季ピッチに立ち続けられている理由を自分なりに分析した。
「誰よりも体を張るつもりで試合に臨んでいます。逃げないでプレーできているとは思っています。(試合に)出られない人の分までタックルする気持ちを強く持つ。ただ漠然とやるのではなく、自分の役割、何が必要かを考えるようになりました」

 高校入学時、友人と「やろうよ」と誘い合ってラグビー部の門を叩いた。花園出場の経験はない。しかし、いま常勝チームのミッドフィールドに堂々と立っている。
「一人ひとりのことをよく見てくれる文化がこのクラブにはある。ラグビーの面でもそうですが、それ以上に人間的に成長させてもらったと思っています」
 昨季、途中出場ながら大学選手権準決勝で国立競技場の芝を踏み、決勝でもベンチ入りした。クライマックスの緊張感を肌で感じた。「あの雰囲気を、何人かの仲間と一緒にいまのチームに伝えられる。そういう形でも貢献したい」と語る。
 なんくるないさ。その言葉の本当の意味がわかるようになってきた。

 昨季CTBでレギュラーだった権裕人は怪我で今季の試合出場はいまだない。シーズン大詰めに向け、必死に調整を進めているところだ。
 前原も、その努力は知っている。だけど、もし彼の準備が整ったとしても、簡単にポジションを明け渡すわけにはいかない。
「スピードでは負けない。ディフェンスでもアタックでも、もっと体を張りたいと思っています」
 同期でありライバル。レギュラー争いをより熾烈(しれつ)にすることが、このクラブの強さを支えると理解している。だからこそ、最後の最後まで「13番」にこだわり切る。

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