トップキュウシュウAの決勝リーグ最終節が29日、博多の森陸上競技場でおこなわれ、九州電力キューデンヴォルテクスが中国電力を51−0で下し、全勝で3年ぶり12回目の優勝を果たした。2季ぶりのトップリーグ復帰を目指す九州電力は来年1月12日から始まる「トップチャレンジ1」に進む。
一方、栄冠には届かなかった中国電力だが、前節で広島のライバルであるマツダを破っており、2位通過で、5シーズンぶりのトップチャレンジシリーズ参戦を決めた。キュウシュウ、イースト、ウェストの各地域リーグ2位チームが集う「トップチャレンジ2」は12月7日からバトル開始となる。
外国人選手がいなくなったとはいえ、昨季まで日本最高峰リーグで戦っていた九州電力の力はキュウシュウでは群を抜いていると思われた。しかし、10月4日の予選リーグで両チームは大接戦を演じており(九電 40−36 中電)、番狂わせの可能性も十分あった。
チャレンジーは最初の10分間で流れを引き寄せたかったが、序盤を支配したのは九州電力だった。前半4分、ゴール前スクラムからのアタックで先制し、約10分後にはラインアウトからモールで押し込んで2トライ目を挙げた。
キューデンヴォルテクスは前半の多くの時間を敵陣でプレー。それでも、中国電力のしぶといディフェンスがなかなか追加点を許さず、自分たちのミスも重なって、前半を14−0で終えた。
後半の立ち上がりも、攻め込みながらノックオンやラインアウトミスを繰り返した九州電力。しかし、54分(後半14分)頃、ゴール前のペナルティから速攻を仕掛けてFW突進でスコアを動かした。さらにPGで3点追加したあと、61分にはセブンズ日本代表のFB加藤誠央がギャップを突いて走り抜けリードを拡大。その約6分後にはスクラムを押し込み、この時点で勝負あり。その後九電は2トライ(1ゴール)を加え、試合終了前にはPGで50点台に乗せ、地域リーグ最後の戦いを笑顔で終えた。
「全勝優勝でトップチャレンジ1に進むという、最低限のノルマを達成してホッとしています」と勝った九州電力の平田輝志監督。「今日は、前半にいろんなことをやろうとしすぎてリズムを悪くし、ミスが重なった。チームの方向性がブレている感じはなかったが、やろうとしていることを早く明確にして、それに対してみんながしっかり動く必要があった。後半はコミュニケーションレベルを上げてよく修正したと思います」と試合を振り返った。
トップリーグから降格した九州勢は、地域リーグで他チームとレベル差がありすぎると言われてきたが、平田監督はいい経験をしたと口にする。
「中国電力さんと10月に戦ったときはあわや敗戦というところまで追い込まれました。マツダさんにしても、11月最初の試合は前半は僅差だった。正直、圧倒的な力の差は感じなかったです。特に、中国電力さんにあわや敗戦という試合では多くを学ばせてもらったので、あれがなかったら、今日はもしかしたら違う結果になっていたかもしれない。中国電力さん、マツダさんと戦って、『決して我々は強いチームではない』ということがわかりました。一つ一つのプレーをまじめに、正確にやって、15人みんなで戦わないと勝てない。それはどこが相手でも一緒。それを再認識してチームをもう1回固めてきたので、いい経験になったと思います」
目標は言うまでもなく、トップリーグ復帰だ。厳しい戦いが待っているのは覚悟している。
「関東、関西のチームを見ても、我々はチャレンジャーであることは間違いない。でも、チャレンジャーにはチャレンジャーの強みがある。外国人がいないならいないでの強みも。5回やったら4回は負けるかもしれない。でも、1回を勝ちに行く。集中力とチーム状態をピークに持って行って、一発勝負を仕掛けていきたいと思っています」
一方、敗れた中国電力のキャプテン、LO庄島啓倫は「前節、12年ぶりにマツダ戦勝利で勢いに乗って、打倒・九電で挑んだんですが、相手のクオリティがすばらしく、ウチのテンポにもって行けなかった」と唇をかんだ。しかし、リベンジを狙う瞳は輝いている。「自分たちのラグビーはできなかったですけど、いいモチベーションをいただけたので、来週からのトップチャレンジに活かしたい。チームは今季、試合を重ねるごとに成長しています。2位チーム同士の戦いを制して、もう一度、九電さんにチャレンジしたいです」