日本ラグビーは、これまでに経験したことのないスピードで走らなければならない。多くの人が待っていた、日本チームのスーパーラグビー入り。参入決定はゴールではない。戦いへのスタートラインに立つために、やるべきことは山積している。
11月20日、SANZAR(スーパーラグビーを主催する南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリアの連合組織)執行理事会で正式に承認された今回の参入。21日には同執行理事会から帰国した矢部達三日本協会専務理事が会見したが、この先決めなければならない事項に関してのタイムライン等について明言されたものはほとんどなかった。しかし水面下で準備は進められている。新規参入チームの指揮官選定や、選手たちの選出&契約に関する動き、トップリーグ各チームとの話し合いなどは特に急がなければならない。
2016年3月の開幕から逆算すれば、少なくとも半年前までにはスコッドが固まっていなければならないだろう(2015年夏)。その前までに各選手との契約を済ませるためには、2015年春までにはスコッドを選出。選手たちを選ぶ指揮官は2015年に入ってすぐには決めておかなければならない。さらに「スーパーラグビーチームのヘッドコーチは、日本代表ヘッドコーチと密接な関係にある人を」というスタンスを明確にしているから、2015年(秋の)ワールドカップ後の日本代表ヘッドコーチは、今年中か2015年早々には決めておく必要がある。
チーム運営資金調達のメドもつけなければいけない。テレビ放映権料に関しては、すべてがSANZARに入る(そこから各チームへの分配金はある)。各チームの懐に入るのは(ホームゲームでの)入場料収入+ローカルスポンサーとの契約料。スポンサー探しについて、会見では現在交渉中とされた。
チームの年間運営費は6億円から8億円と予想されている。SANZARへの加盟料は発生しないが、リーグ運営にかかる費用の分担がある。例えば日本チームが南アフリカへの遠征等アウェー戦の場合、その渡航費と現地での滞在費はSANZARが持つ。自分たちの負担となるのは、ホームゲーム開催時の運営費だ。スタジアムの使用料、施設設営やスタッフの賃金など、試合開催に必要な経費だ。これに、ホームゲームに向けての自チームの活動費用(合宿費用など)と選手たちのサラリーを加えたものがチームの主な運営費となる。
各選手のサラリーに関しては、日本では企業チームに所属している選手がほとんどだけに、新たな契約形態を考えないといけない。チームの性質上、日本代表選出時とは違うものになるはずだ。トップリーグ所属選手は、社員選手、プロ契約選手が混在しており、それぞれについて状況も条件も違ってくるだろう。その契約形態(期間、補償なども含む)によって、チーム負担の総額は大きく変わる。
外国人選手との契約には、特に好条件を提示する必要がありそうだ。会見に出席した田中史朗は「(チームメートのベリック・)バーンズは日本のシーズンがオフになったら『新シーズンに備えるために体を休めるんだ』と言っています。日本に来ている選手たちには、そういう選手たちも少なくない。彼らをスーパーラグビーでプレーさせるためには、それなりの条件が必要だと思います」と話した。
会見では参入チームに関して、「日本代表選手、日本代表スコッド(候補選手たち)、トップリーグでプレーする外国人選手らで編成したい」と発言があった。外国人選手に関して「トップリーグ在籍」を重視するのは、ファンに、親しみを込めてチームをサポートしてほしいからだと関係者は話す。会見では「ドリームチーム」と表現した。日本代表資格に関係ない「オール日本ラグビー」に近いチームを編成し、日本代表強化につなげたい。
南アフリカ・カンファレンスに入ることを考えれば、サントリーに所属するフーリー・デュプレアやスカルク・バーガーらと契約を結べたらいい。敵地での注目度も上がるし、日々のトレーニング強度も上がる。
参入決定記者会見で、チーム運営については「外部パートナーとの契約でプロフェッショナルなものにする」と明言された。初動が遅れればすべてが遅れ、せっかくの機会を最大限有効に活かせぬ可能性も出て来る。他のスーパーラグビーチームからのスタッフの招聘なども選択肢に入れて考え、実行しなければならない。