11月8日、秩父宮が満員の観客で埋まった同時刻。熱心なトップイーストファン1200人が見守る中、相模原ギオンスタジアムで栗田工業ウォーターガッシュ×三菱重工相模原ダイナボアーズの全勝対決がおこなわれた。
トップイーストDiv.1の10チーム総当たりで争われるリーグ戦、その6節を終えてどちらも6勝0敗。勝点では三菱重工相模原(29)、栗田工業(27)と、三菱重工相模原が暫定首位を走る。
栗田工業ウォーターガッシュは昨季4位ながら、10月に同3位の釜石シーウェイブスに27−26で競り勝つと、11月1日には同2位の横河武蔵野アトラスターズを27−10で退け、一躍、トップチャレンジ出場権争いの有力候補に躍り出た。トップイーストで圧倒的な戦力を誇る三菱重工相模原に土をつけることができれば、栗田工業にとって初のトップチャレンジ進出への道は大きく開ける。
地元相模原で迎え撃つ三菱重工相模原は、この日もスターティングメンバー15人のうち、3列にFL中川ゴフ アレキサンダアキラ、NO8ミロ デイビッド、10〜13番にSOスティーブン・ドナルド、WTBシェーン・ウイリアムズ、CTBレポロ テビタ、CTBロコツイ シュウペリと6人の海外勢(日本国籍取得選手を含む)を並べ、パワフルに走り、破壊的ともいえる圧力を発揮した。
14時のキックオフ。栗田工業は良いリズムで攻め込み、5分にBKのオープンへの展開からトライを奪って7−0と機先を制したものの、直後に三菱重工相模原CTBロコツイのトライで同点とされる。そして、川尻大監督が「前半はトライの後、三菱さんの圧力にまったく前に出られずパニックに陥ってしまった」と振り返ったように、三菱重工相模原の多彩な攻撃に簡単にゲインを許してしまう。ダイナボアーズのミスに助けられる場面も少なくなかったが、前半だけで6トライを献上し、7−38で折り返し。大きなビハインドを背負ってハーフタイムを迎えた。
しかし、三菱重工相模原に傾いていた勝負の天秤は、後半開始直後から大きく揺れ始める。
「ハーフタイムに『マイボールをキープして、ディフェンスでしっかり前に出よう』と、今季これまで積み重ねてきたことを、もう一度確認した」(栗田工業・川尻監督)。
栗田工業は後半2分、三菱重工のペナルティで敵陣深い位置でのラインアウトを得ると、展開して最後はモールを押し込みNO8アッシュ・パーカーがトライ。その後もNO8パーカーと今季新加入のSOデイビッド・ヒルを攻守の軸に、FW、BKが一体となってボールをつなぎ、前に出続けた。SH森洋三郎キャプテンがテンポよくさばき、接点ではPR夏目賢らが献身的に体を張った。時折、三菱重工の圧力に押し戻されながらも、14分にFL大野潤滋朗のトライで差を縮めると、三菱重工相模原が反則の繰り返しによるシンビンで14人となった隙を逃さず、22分に途中出場のCTB茅原良平が4トライ目を挙げ、ボーナスポイントをもぎ取った。
さらに勢いに乗るかと思われた栗田工業だったが、三菱重工相模原の地力、もしくは意地がそれを許さなかった。直後のキックオフで栗田工業が自陣深く受けたボールを、三菱重工相模原WTB太田千博が値千金のチャージ。そのままゴール前に攻め込んだ三菱重工相模原が24分に後半初めてのトライを奪い、24−45と突き放した。その後も一進一退の攻防が続いたが、三菱重工相模原がロスタイムにダメ押しのトライを挙げて24−50として勝点5を獲得し、全勝を守り抜いた。
敗れた栗田工業ウォーターガッシュだったが、4トライを挙げて勝点1を確保した。三菱重工相模原の4失トライは今シーズン初。順位争いが熾烈になるほどに、ボーナスポイントの重みは大きくなる。
川尻監督は「今シーズンは『必ずトップチャレンジへ』という気持ちで日々の練習を積み上げてきた。(今季の好調の要因は)その日々の積み重ねを試合で表せているのだと思う。今日は(スコアが開いても)下を向かずに、最後まで『勝とう』という意識で戦えたことに成長を感じた」と選手たちをねぎらった。そして「今日も、あくまでも9試合のうちの1試合。残り2試合も、しっかり戦っていきます」と、確かなまなざしで前を向いた。
トップイーストDiv.1の熱戦は12月7日まで続き、上位2チームがトップウェスト、トップキュウシュウの上位チームとトップリーグ昇格をかけて争うトップチャレンジに進出する。