11月3日、京都市中京区にある島津製作所のグラウンドにて、京都バーバリアンズクラブ主催のU13(13歳以下)ラグビー大会「U13 BARBARIANS TROPHY」が開催された。昨年から始まった同大会は、小学校、中学校というカテゴリーで分けるのではなく、13歳以下というくくりでラグビーを楽しみ、交流する画期的なもの。ラグビースクールと中学のラグビーファミリーが連携を深めることも目標の一つであり、アフターマッチファンクションを行ってラグビー文化を知るなど、さまざまな趣向が凝らされている。
バーバリアンズ・トロフィーは、ニュージーランドのランファリーシールドのように、チャレンジ制をとっている。昨年優勝した京都市立藤森中学が保持していたが、高槻ラグビースクールの挑戦を受けて敗れたため、現在は高槻RSが保持。今年の優勝チームが再び高槻RSにチャレンジする。今年は、バーバリアンズ・トロフィーをかけて戦う「トロフィーリーグ」と、バーバリアンズ・シールドをかけて戦う「シールドリーグ」に分けられ以下のチームから、小学6年生、中学1、2年生が参加した。
トロフィー=藤森中学A、京都西RS、亀岡中学、修学院中学、下鴨中学A
シールド=プログレジュニア、福知山おおぞらUnion、下鴨中学B、藤森中学B
試合は9人制で行われ、各リーグの順位は勝ち点制で決められた。ハイレベルの熱戦が続いたトロフィーリーグでは藤森中学が連覇。シールドリーグでは、今季から導入されたプレースキックとドロップキックのコンペティションのポイントも加え、プログレジュニアが逆転優勝。ドロップキックで抜群のコントロールを見せた選手もおり、個々のスキルアップに影響する試みは大成功だった。また、試合はグラウンドの半面で行われるため、トライ後のゴールを狙うポストが無い。そこで、インゴールにゴールエリアを設け、味方選手を立たせてノーバウンドでキャッチできたら「ゴール成功」という工夫もあった。この方法であれば道具も不要で、参加した指導者の皆さんからも好評だった。
大会終盤には、オーストラリアレベル2資格保持者のコーチ井上正幸さん(大阪体育大学OB)による「シェイプ」と「ポッド」の戦術講習会も開催された。島津製作所のラグビー部員が協力し、日本代表などが採用する「シェイプ」と、ニュージーランドで生まれ、オールブラックスやマオリ・オールブラックスも採用している「ポッド」の戦術コンセプトの違いなどについて実演を交えて解説があった。選手たちも興味津々だったが、熱心だったのはやはり指導者のみなさん。うなずきながら、最先端の戦術について学んだ。
優勝した藤森中学ラグビー部の藤谷徹部長は、この大会の意義を笑顔で語った。「目標があると練習への熱の入り方がまったく違います。勝ちたいから先輩の話も一生懸命聞こうとする。みるみる伸びます。すごくいいと思いますね」。
13歳以上の選手たちが裏方としてサポートするのもいい。主催のバーバリアンズクラブ代表・大島眞也さんは、大会プログラムで次のように呼びかけた。「アフターマッチファンクションは、会場に来られた応援の方も含めて、すべての方に参加していただきたい。選手、コーチ、お父さんお母さん、スタッフ、すべての人がラグビーによって楽しい一日になりますように」。そして、ジュースとお菓子によるアフターマッチファンクションでは、参加した皆さんの笑顔が広がった。
【筆者プロフィール】
村上晃一(むらかみ・こういち) ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年 4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーラン スの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグ ビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。BS朝日ラグビーウィークリーにもコ メンテーターとして出演中。