名古屋市の瑞穂運動公園ラグビー場で開催された2試合は地元チームが敗れた。1試合目は東芝ブレイブルーパスが地力の差を見せつけたが、2試合目のトヨタ自動車ヴェルブリッツ対近鉄ライナーズは、スコアが二転三転する拮抗した展開で、観客席を大いに沸かせた。
勝った近鉄ライナーズのマン・オブ・ザ・マッチは、キャプテンのPR豊田大樹(とよた・だいき 25歳)だった。前半17分、SO重光泰昌がディフェンダーを引き付けながら流れてきたところに真っすぐ走り込んでの逆転トライは、まるでBK選手のようなパフォーマンス。スクラム最前列で体を張り、トヨタの猛反撃を受けた後半30分過ぎには、トライを防ぐ猛タックルで勝利を呼び寄せた。
「ミスは多かったのですが、最後まで前に出ようという気持ちが勝因。マン・オブ・ザ・マッチはみんなのおかげです」と記者会見で控えめに語った豊田キャプテン。勝利を引き寄せたトライとタックルについて質問されると、「重光さんがラインを引っ張ってくれて…、僕はまっすぐ走っただけで…、え〜、あの〜、何も考えていなかったのに、考えていたように話すのはちょっと〜」と、報道陣を笑わせた。
ナイター試合だったため、記者会見は午後9時を過ぎていたのだが、この日の最優秀選手には、6時間後に起床しての大切な仕事が待っていた。「ほとんど眠れませんね(苦笑)」。実は、9月21日(日)の早朝、近鉄花園ラグビー場の最寄り駅「東花園」では、ここ数年続いていた高架化工事が終わり、難波行き電車の「出発式」が行われることになっていた。
東大阪市生まれで、親子二代で近鉄のプレーヤーである豊田は花束贈呈役を任された。現在は本社勤務だが、つい最近まで「大和西大寺駅」に勤務し、電車の発着アナウンスをしていた豊田にとっても高架完成は嬉しいニュース。工事中は、難波行きと奈良行きのホームが別々の場所にあったが、21日からはメインの駅に統合された。駅利用者にとっても、ラグビーファンにとっても朗報である。「自動販売機など近鉄ライナーズ色の濃い駅になって、ラグビーファンの皆さんには楽しんでもらえると思いますよ」(豊田)
10月5日(日)の関西大学Aリーグ開幕戦が、大勢のラグビーファンの皆さんが新装なった駅を目にする最初の日になる。そして、10月11日には、トップリーグ・ファーストステージ第6節が行われる。神戸製鋼対トヨタ自動車、近鉄対サントリーという好カードだ。ラグビーファンで賑わう、新しい東花園駅を早く見てみたい。
(写真提供:近鉄ライナーズ)
【関西エリア試合結果】
■愛知・瑞穂運動公園ラグビー場
・豊田自動織機シャトルズ● 10-35 ○東芝ブレイブルーパス(前半 0-11)
・トヨタ自動車ヴェルブリッツ● 31-38 ○近鉄ライナーズ(前半 17-17)
村上晃一(むらかみ・こういち)
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年
4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーラン
スの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J
SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグ
ビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。BS朝日ラグビーウィークリーにもコ
メンテーターとして出演中。