(撮影:K.Takenaka)
昨季入替戦を経験したNTTドコモレッドハリケーンズが今季も苦しんでいる。トップリーグ2014-2015のファーストステージ、いまだ勝星なしで4敗目を喫し、プールBの最下位を抜け出せない。
このまま低迷を続けるのだろうか。否、9月13日に山口・維新百年記念公園で彼らの戦いを観た人々は、NTTドコモの覚悟を感じたに違いない。チームの愛称どおり、大差をつけられてもフィールドを激しく駆けまわり、必死にゴールを目指した、勇敢なレッドハリケーンズだった。
相手は優勝候補の一角で、今季負けなしの神戸製鋼コベルコスティーラーズ。
序盤は両チームの堅守が光る。ドコモは9分、先発したFLハインリッヒ・ブルソーが22メートルライン内でのPKからタップ&ゴーで仕掛け、下半身を襲ってきた相手ディフェンダーをジャンプで飛び越えゴールラインに迫った。が、得点には至らない。
13分にようやくスコアボードが動く。神戸製鋼がゴール前のラインアウトからモールで前進し、ゲームキャプテンを務めたLOアンドリース・ベッカーがパワフルにインゴールへ飛び込んだ。
PGで3点を追加した神戸製鋼は33分、相手のミスで球を得ると、CTB山中亮平がパントキックで揺さぶり、バウンドボールをFL鈴木敬弘が確保、WTB山下楽平につなぎ、一気にゴールへ走った。15-0となる。
なんとか食らいついていたドコモだが、後半が始まって5分後、HO神野慧二郎がイエローカードをもらい、FWが7人になってしまった。直後、スクラムで崩れ、レフリーにペナルティトライを宣告されてしまう。50分には神戸製鋼のWTB中濱寛造がチーム4トライ目を奪い、29-0で、勝負はほぼ決まったかに思われた。
しかし、ドコモの選手は誰一人戦意を失っていなかった。自陣深くからでもボールを大きく回し、FBリアン・フィルヨーンなどが果敢に仕掛ける。54分、22メートルライン内のPKから速攻、WTB茂野洸気が捕まりながらもゴールへボールをねじ込み、ビデオ判定(TMO)でトライが確認された。
58分に神戸製鋼のキーマンとなっていたLOベッカーとHO木津武士がベンチへ下がると、ドコモの反撃は加速する。59分、WTB茂野が左タッチライン沿いを突破し、バックスがつないでWTB渡辺義己がフィニッシュ。63分にはゴール前ラインアウトからモールで押し、フォワードが抜け出したあとWTB渡辺がトライを決め、約10分間で29-19の接戦に変わった。
その後、神戸製鋼に7点を奪われたNTTドコモだったが、75分にも会場を沸かす。FBフィルヨーンが自陣グラウンド上のボールを大きく蹴って、チェイスで相手にプレッシャーをかけ、仲間のサポートも早く、ラックでターンオーバー。CTBパエア ミフィポセチからWTB茂野へとボールは渡り、4トライ目を挙げてボーナスポイントを獲得した。
結局、36-26で勝ったのは神戸製鋼だったが、3012人の観衆はNTTドコモの選手たちにも大きな拍手を送った。
「連敗が続いているなか、強敵である神戸製鋼さんに対し、まずトライを取りに行こうと、積極的に戦いました。ハーフタイムで、『自分たちがこれまで取り組んできたことをやり切ろう』と確認し、それが後半の4トライにつながったと思います」と語ったNTTドコモの下沖正博監督。吉岡宏樹主将も、「後半は思い切って攻めていこうということで、自陣からでもボールを回しながら、小さいチャンスもものにできました」と光明を見いだす。
指揮官はモールディフェンスで奮闘したFWも称え、「次につながるプレーが確かにあった。残りの試合もあきらめずに、1試合1試合、勝ちを目指して頑張っていきます」と前を向いた。
敵将、ギャリー・ゴールド ヘッドコーチもドコモの力を認めている。
「終盤に複数の主力選手をベンチへ下げてからチーム(神戸製鋼)は集中力を欠き、プレーの質が下がって相手に4トライを献上してしまった。しかしそれは、ドコモがパッションを持って向かってきたからでもある。彼らは最後まで自分たちのプレーを懸命にやり続けた。だから、接戦となったのは、正当な結果なのかもしれません」
(撮影:K.Takenaka)