明け方まで降った雨も上がり、多くの同胞が東京・十条にある東京朝鮮中高級学校グラウンドに集った。『在日Korean Rugby フェスティバル in 東京』が開催された8月30日は、同校グラウンドが一日中賑わった。
同フェスティバルは毎年各地区の持ち回りで開催されており、これで5回目。今年から在日本朝鮮人闘球協会の主催となった。この催しの目的は、地域同胞ラグビーを活性化し、未来のアジアラグビーを担う学生たちを育成、応援するため、全国の仲間が結束すること。当日は2009年から活動を始めた高麗ジュニアラグビースクールをはじめ、朝鮮大学ラグビー部、ALLOUT INTERNATIONAL(クラブ)、在日Korean OB選抜、東京闘球団高麗、千里馬クラブらファミリーが集まり、玉川学園低学年ラグビー部、日本体育大学ラグビー部が招かれて、大勢の仲間が楕円球を追った。
子どもたちの試合、タッチラグビー教室、クラブ親善試合などがおこなわれたなかで、注目されたのは朝鮮大と日体大の試合だ。昨年、スポーツ交流協定を結んだ両校。これは、主にサッカーなどを中心としたスポーツ交流に加え、研究者の学術交流なども視野に入れたもので、日体大はこれまでにサッカー部やバスケット、レスリング、柔道各部が北朝鮮に遠征している。今回のラグビー部同士の交流も、そんな背景があっておこなわれたもの。朝鮮大学ラグビー部の呉衡基監督は、「私たちは、なかなか名門校と試合をする機会がありません。ファーストジャージーも着ていただいて、とても貴重な経験になりました」と語った。
夏合宿を終えて3日しか経っていなかった日体大は、Aチームでの試合とはいかなかったが、今季取り組む「個々の判断を大切にして、それを連続させるランニングラグビー」(秋廣秀一ヘッドコーチ)を実践しようと、選手たちは全力で戦った。これに対し朝鮮大も、果敢なアタックと持ち前のタックルで応戦。前半は10-10のスコアだった。
後半は日体大が2トライを奪い、ホームチームを零封。24-10の最終スコアで記念すべき試合の勝者は招かれた側となったが、呉監督は敗戦にも、「3週間後にシーズンインとなるこの時期に、プラスとできる経験をできた」と語った。
朝鮮大は昨季、関東大学リーグ戦3部で3位。今季は2部昇格を狙っている。近年は強豪の大阪朝高、都大会で上位常連の東京朝高の卒業生がラグビー強豪大学へ進学することも多いため、部員は28人(女子マネージャー1人含む)と少ないが、伝統のディフェンス力を軸に上昇したい。
「気持ちの入ったチーム」と今季の選手たちに信頼を寄せる呉監督は言った。
「個々の能力は高いと思っています。それらにつながりを持たせられるかがカギだと思っています」
各地の朝鮮高校ラグビー部員たちが見守っていただけに、「彼らの前で勝って、強い朝鮮大学を印象付けたかったのですが…」と悔やんだ同監督は、シーズンに結果を残すことを誓った。
8月31日には、同地に東京、大阪、愛知、神戸の朝鮮高校ラグビー部が試合をおこなう『朝高ラグビー部中央大会』も開かれた。絆を確かめ合った2日間にため込んだエネルギーを、各チームがこの秋の飛躍につなげるだろう。