ラグビーリパブリック

京都色が濃いトヨタ自動車 西京極で好発進

2014.08.25

 トップリーグのファーストステージ第1節は、予想以上の熱戦が続き各地の会場を盛り上げた。関西エリアの試合も、8月22日、関西地区のオープニングゲームとなったNTTドコモ対近鉄はじめ僅差勝負が相次いだ。(※静岡県は関西ラグビー協会の管轄下にある)。

 「関西色」の濃いチームとして注目されたのは、京都の西京極でキヤノンと戦ったトヨタ自動車だった。全47選手の中で京都の中学を卒業している選手が9名。京都出身、大学が京都の選手を含めると、なんと14名が京都ゆかりの選手なのである。関西色というより、「京都色」。もちろん、トップリーグ16チームの中でもっとも多い数字である。こうしたカウントは地元でラグビー普及にあたる関係者や、楕円球を追う子供達には励みになるものだ。

 負傷欠場のキャプテン吉田光治郎に代わってゲームキャプテンを務めたSO文字隆也(入社5年目)は、京都市立修学院中学を卒業し、京都市立伏見工業高校から法政大学に進んだ。キヤノン相手にキックでしっかり地域を獲得し、豪雨の悪条件下で5つのプレースキックを成功させ、俊敏なパスで先制トライも生み出した。今やチームに欠かせぬプレーメーカーである。勝利後の記者会見では、地元紙の記者からの質問に「京都で試合をすると、いろんな方々に見に来てもらえるし、気持ちが高ぶりました」とコメント。友人や親戚、中学時代の恩師(故人)の夫人など、応援に駆け付けてくれた皆さんに勝利をプレゼントした。

 PR吉田康平(入社3年目)は、勧修中学から京都成章高校、帝京大学に進んだ。「後輩(京都成章高校ラグビー部)が全部員で来てくれているので、恥ずかしいプレーはできませんでした」と、スクラムでキヤノンに圧力をかけた。この日は手の骨折があって欠場していたWTB水野弘貴(入社11年目)は、小学1年生から京都の洛西ラグビースクールでラグビーを始め、洛西中学、東山高校、関東学院大学と進んだ。「京都のやつらは燃えていました。京都の中、高生は勝ち上がらない限り西京極では試合ができないですから」

 トヨタ自動車に京都の出身者が多いのは、どうやら偶然である。入社12年目と、京都出身者では最年長選手となったLO北川俊澄は、南京都ラグビースクールでプレーし始め、伏見工業高校から関東学院大学に進んだ。この日、コメントをとった中では唯一、標準語のアクセントである。「京都出身者は地元愛が強い。僕が標準語を話すと、きしょい(気持ち悪い)と言われます(笑)。でも、僕は『京都会』とか、そういうのは好きじゃない。どこの出身であろうと、いい奴はいっぱいいますから」。

 ベテランの言葉により、京都偏重の記事にもバランスが保たれた。廣瀬佳司監督、吉田光治郎キャプテンは大阪、この日のマンオブザマッチのFB竹田宜純は奈良出身である。関西パワー全開のトヨタ自動車は、次節、地元・豊田スタジアムでサントリーを迎え撃つ。激しいコンタクトをいとわない「フィジカルラグビー」で、番狂わせを起こせるか。関西のラグビーファンにとって、楽しみな試合になる。

(文:村上晃一)
<ジャパンラグビー トップリーグ 2014-2015 ファーストステージ第1節>
【関西エリア試合結果】

■大阪・キンチョウスタジアム
・NTTドコモレッドハリケーンズ 17-21 近鉄ライナーズ(前半 0-14)

■静岡・ヤマハスタジアム(磐田)
・ヤマハ発動機ジュビロ 38-9 豊田自動織機シャトルズ(前半 12-9)

■京都・京都市西京極総合運動公園陸上競技場兼球技場
・トヨタ自動車ヴェルブリッツ 23-16 キヤノンイーグルス(前半 13-10)
・神戸製鋼コベルコスティーラーズ 19-17 リコーブラックラムズ(前半 6-10)

【筆者プロフィール】
村上晃一(むらかみ・こういち) ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。ラグビーマガジン、ナンバー(文藝春秋)などにラグビーについて寄稿。J SPORTSのラグビー解説も98年より継続中。99年、03年、07年、11年のワールドカップでは現地よりコメンテーターを務めた。著書に、「ラグビー愛好日記トークライブ集」(ベースボール・マガジン社)3巻、「仲間を信じて」(岩波ジュニア新書)などがある。BS朝日ラグビーウィークリーにもコメンテーターとして出演中。

(写真:トヨタ自動車のプレーメーカー、文字隆也/撮影:長岡洋幸)
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