北九州の名門鞘ヶ谷ラグビースクールから東福岡高校の門を叩いておよそ2年。ラストイヤーを迎えた古川聖人は、強豪大学に負けず劣らない数を誇る部員たちをまとめる立場となった。高校2年で17歳以下の日本代表にも選出されるなど確実にキャリアも積んでいる。チームとしては、春の全国高校選抜大会で2年ぶりに優勝し王座を奪還した。あと欲しいタイトルはただ一つ。花園での日本一の称号を手にするだけだ。入学以来、彼らの学年は花園優勝を経験していない。3連覇した2011年度大会以来の3年ぶりの王者へひたすら走り続ける。
古川キャプテンに話を聞いた。
■春の選抜大会を終えて
ひとまずは優勝という目標を達成できました。チームとしてすべての大会で優勝するというのを目標にやっていますので、その点では満足です。ただ、課題として自分たちの不用意な反則から失点してしまう場面もありましたし、ミスに乗じて相手を勢いづかせてしまうところもあったので、そこは反省しています。例えば尾道(広島)戦、68-33だったんですが、完全にやられてしまったという失点よりも、自陣でのミスや反則での自滅的な失点が積み重なって33点も取られることになってしまいました。トーナメントを戦う上で、少しでも隙をみせてしまうと取り返しがつかなくなるという恐さをチームで経験できたことはプラスに考えています。
■全国レベルの大会で自分たちの力がどの程度なのか自覚できた
コンタクトに関してはやれているなと感じました。準決勝では東海大仰星(大阪)に12-10で勝ったんですけど、やはり関西勢はフィジカルが強いと思いましたし、関東勢はスマートなラグビーをしますね。ただ、僕らもトライを取ろうと攻め急ぎすぎた部分があって、特にゴール前まで攻め込んだときにミスがありました。そのあたりのチーム全体をコントロールしきれなかったことが接戦になった要因だと考えています。自分たちのラグビーをやれれば、そう簡単に負けることはないと自信をもてたというのもありますね。
僕たちはコンタクトを軸に「強い」ラグビーを目指しています。というのも、展開力を活かすためにも縦の強さが必要になってきますし、縦にくるか横に展開するかわからない状況を作って相手のディフェンスにプレッシャーを与えたいと考えているので、まずは「強さ」ですね。
■自分自身の強み
やはり個々の強さ、タックルです。低くいくこと。それはサポートプレーでも同様です。そして運動量、これは僕自身、誰にも劣っていないと思っています。FLとしては早稲田大学出身(現 NTTコミュニケーションズ)の金正奎選手や、昨シーズンまでサントリーでプレーしていていたジョージ・スミス選手みたいなプレーを目指してやっています。僕自身は体が大きいわけではないので、運動量だったりジャッカルだったり、見ているだけでもとても参考になります。あとは負けず嫌いなところは長所といってもいいですかね。
■最上級生になったことでの心境の変化
いままでは先輩の後をついていくだけでよかったんですが、これからは後輩だけでなく、東福岡のラグビーそのものを引っ張っていかなければなりません。そういう意味で責任感みたいなものは強く持つようになりました。練習においても妥協せずに取り組む姿勢を見せられるよう頑張っています。特にFLというポジション的なのもありますが、皆が嫌がるようなことを率先してやるように心がけています。
■各代表でプレーして得られるもの
一言で言えば経験ということなんですけど、強い選手と体を当てたり、うまい選手とプレーすることによって自分のレベルを測れるのは大きいですね。自分の伸ばすべきところが具体的にわかるので、練習への取り組みの意識も高くなっていると思います。
■“ヒガシ”の魅力
正直ヒガシというと厳しくて大変かなと思われがちですけど、決してそんなことはないです。まずラグビーをする環境の良さは日本でも屈指だと思います。先生たちのサポートも厚く、集中してラグビーに取り組めます。休みもちゃんとありますしね。あとは人数が多いので部内マッチも盛んにできる上、競争意識も高いので努力する環境に常に身をおけます。部内マッチをしても接戦で、メンバーも固定されていないので気を抜けないですよ。だから全体練習自体はそんなに長くはないですが、皆残って個人練習していますね。
ラガーマンとしてヒガシにきて自分は良かったなと思っています。僕は鞘ヶ谷ラグビースクールにはいまでも顔を出しに行っています。とは言っても、中学生に指導するためではなくて、楽しみに行く感じですね。お世話になったコーチの方々に大会の報告をしたり挨拶するのも楽しみの一つです。
■花園に向けて準備すること
いまの僕たちの課題はミスや反則が多いところです。そういう意味では敵は己の中にあると僕は思っています。そういったストレスをコントロールしていければもっと強くなると思いますし、目標である花園での優勝をチームで勝ち取れると思っています。
ただ、やはりヒガシの選手は個性が強いので、まとめるのは大変ですよ(笑)。でも全員が明確な目標もってプレーしていますし、相手がいるといったときにスイッチが入れば凄い集中力を発揮します。とにかく花園で日本一になるために日々努力したいと思います。
一言ずつ選んで落ち着いて答える姿は、高校生とは思えないほどだった。少しのインタビューだったが、彼の人間力の高さが伝わってきた。
体も決して大きい方ではない。相手選手を跳ね飛ばして前進して行くようなインパクトプレーヤーでもない。でも試合中、彼は相手の嫌がるプレーを淡々とやり続け、ブレイクダウンで絶対的な存在感を示す。それが彼の最大の武器でもあり魅力だ。そのワークレートの高さをグラウンド内外で発揮し、チームを日本一に導く。
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