宗像市の谷井博美市長(写真中央右)とサニックスの宗政伸一社長(中央左)も調印式に出席した。
(撮影:Hiroaki. UENO)
「責任がある」。その言葉が印象的だった。
福岡・宗像(むなかた)市の谷井博美市長だ。
「サニックスがトップリーグから降格したとき、私たちの応援が足りんかったとじゃなかろうか、と。今回、市民応援団を結成したいと思っています。(必死で応援していく)責任がある。そう思っています」
2014-2015年シーズンに2年ぶりのトップリーグ復帰を果たした福岡サニックスブルースが『宗像サニックスブルース』に名称を変更した。4月29日には名称変更が発表されると同時に、同チームと宗像市の連携・協力に関する協定の調印式もおこなわれ、両者がガッチリと手を握った。
玄界灘を臨む宗像市神湊にホームグラウンドを構えるブルース。1994年のチーム創設以来同地で活動を続け、20年が経つ。試合会場では地元の方が大漁旗を振り、海の幸、山の幸がチームへの差し入れとして届けられることもしばしば。お祭りやイベントを選手、市民が一緒になって盛り上げてきた日々もある。
試合会場にも頻繁に足を運び、そんな空気を何度も肌で感じてきたサニックスの宗政伸一社長は、いつかチーム名に地元の名を付けたいと思ってきた。2012-2013年シーズンを終えてトップリーグ降格が決まったとき、選手たちに「次に昇格できたときには宗像という名を付けよう」と呼びかけたのは、冒頭の谷井市長の言葉同様、責任を感じていたからだろう。応援してくれる地元の人たちのためにも、と社長が先頭に立って、再浮上の意志を強く表わした。降格しても強化を緩めず、むしろ力を込めた。
5年ほど前に市とチームの双方から今回の構想に関する話しが出始め、この2年でより具体化し、この日を迎えた。会見の席上で谷井市長が「社長の決断が大きかった」と言うと、宗政社長はトップリーグから降格したときに300人以上の方が集まって激励会を開いてくれた思い出などを口にし、「長年に渡りチームをかわいがっていただいた恩返しをしたかった」と語った。
また、市長は市民応援団の結成を約束した。市の知名度を上げていくためのパートナーとしての期待値は高く、『宗像の日』と銘打って、トップリーグ会場などで広報活動をおこなう予定もある。ブルースは、市のPR活動に積極的に加わり、市民のスポーツ活動の支援、地域貢献活動を展開する。
藤井雄一郎監督は、「身の引き締まる思い」という言葉に続けて、こう言った。
「市民の皆さんとともに日本一を目指していきたい。そして、その活動が、2019年の(日本開催)ワールドカップ開催の時に、1試合でも多く福岡で試合がおこなわれることや、宗像がキャンプ地になることにつながればいいですね」
市とブルース、お互いの充実した決意表明の表情を見て、会見に出席した森喜朗日本ラグビー協会会長は「これ(今回のチーム名称変更、提携)をきっかけに起こることによって、他チームにも動きが出てくるかもしれませんね」と言った。
地域の熱が日本全国に広がり、ラグビーの国へ。そんな理想への第一歩は踏み出された。二歩目、三歩目を誰か踏み出すか。2019年は、すぐにやってくる。ピッチをあげて走り出したい。