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ゾーンに入ったフィジー、東京で栄冠獲得 「いちばんの武器は情熱」と指揮官

2014.03.23

fiji last try

劇的なウイニングトライを決めた7人制フィジー代表のワイセア・ナグング(撮影:松本かおり)

 ともに6試合を戦って、勝負がついたのは最後の5秒だった。
『TOKYO SEVENS 2014』のフィナーレ、カップトーナメント決勝の顔合わせはフィジー×南アフリカ。残り1分20秒で南アフリカが追いつき26-26となった試合は、最後の最後、ワイセア・ナグングが走り切った。フィジーが今シリーズ2度目の優勝。東京では2000年大会以来の栄冠だった。

 デイフェンスに自信を持つ南アフリカ。フィジーは変幻自在のアタックで相手を混乱させ、スタンドを熱狂に誘う。互いにシリーズ上位にいながらカラーのまったく違う両者の攻防は拮抗した。
 前半の得点は19-19。3トライずつを奪い、それぞれが持ち味の出たものだった。先に2トライを先取したフィジーは、相手の僅かな隙を突いて走り切る。南アフリカはターンオーバーやタテへの突進から3連続トライ。何度も戦ってきたチーム同士の争いは、秩父宮でもいつもの熱を帯びていた。

 後半の先手はフィジー。ビッグゲインした南アフリカ、カイル・ブラウン主将のパスがあと10センチ高かったらトライに結びついたのに、それをゴール前で必死に止めて、イッキに切り返す。セテファノ・ザカウの快走に、南アフリカのアスリートたちも追いつけなかった。
 残り1分半弱。南アフリカは敵陣深く攻め込み、PKを得る。速攻からジャスティン・ヘダードが防御裏にショートパントをあげ、自ら押さえて同点トライ。しかし、勝利を呼ぶには至らなかった。

 フィジーの決勝トライは、最後の最後まで変わらぬパフォーマンスを続けられたからだ。長〜いパスを何度でも、どんな態勢からでも。瞬間的な加速もへっちゃらだった。
 7人制イングランド代表監督から転身し、南の島に移り住んだベン・ライアン ヘッドコーチは、「今シリーズは少しスロースタートとなったけれど、結果的に(来週の)香港へ向けていいプレーができたと思う」と語った。
 同ヘッドコーチは就任以来、規律を重視した。そして、コミュニケーションとデイフェンスを高めることに注力。
「それが、自分たち本来のスタイルを出すことにつながると思ったんだ。選手、そしてフィジーの人たちは、自分のことをとてもあたたかく迎え入れてくれた。そして、言うことをよく聞いてくれた。セブンズが国技の国。そういう土壌はあるけけど、彼らのいちばんの武器は情熱だと思う。このチームも、スイッチが入るともう止まらないし、想像できないゾーンに入るんだ」
 スタジアムを興奮させたラグビーは、いつも指揮官の心も鷲づかみにする。

 フィジーが躍動した大会は、セブンズの魅力を伝えるという意味で大成功の大会だったと言っていい。世界中の人々に愛されるそのパフォーマンスを堪能できた東京のファンはシアワセだ。
 試合後の記者会見中、ヘッドコーチの携帯電話が鳴った。
「フィジーのメディアからの電話だよ(笑)」
 ライアン ヘッドコーチの笑顔の向こうに、国民の笑顔も透けて見えた。

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