「個々が責任を果たして勝った」と慶大CTB石橋拓也。(撮影/松本かおり)
信念を持って戦った方が勝った。スクラムで押され、前半20分ちょいで0-15。しかし、最後の20分で走り勝つ自信は揺るがなかった。
軽快に先制した紫紺に対し、黒黄が反撃の狼煙をあげたのは前半終了間際だった。明大陣、右中間に高く上げたハイパントをFB下川桂嗣が見事にキャッチしたところからチャンスをつかむ。左に展開、WTB服部祐一郎がトライラインを越え、SO宮川尚之主将のゴールも成功。7-15と迫り、気分よく後半を迎えることになった。
ハーフタイムの慶大ロッカールームでは、後半に向けての会話があちこちで交わされていた。
PR三谷俊介らフロントローは、前半劣勢だったスクラムについて話し合った。
「自分の方に相手3番の押しが来ていたので、どうしようかと。2つほど対処法を決めました」
それを頭にピッチに出て試してみた。うまくいった方を採用。上回れると自信のあったフィットネスも活かし、後半は互角に組み、最後は優勢に回った。
後半は慶大の40分となった。口火を切ったのは開始3分、CTB石橋拓也。ラインアウトで確保したボールをSH南篤志から直接もらうと、「自分の前が空いていた」と咄嗟に判断し、予定していたプレーを変更した。そのままインゴールへ。ゴールも決まり、14-15と迫った。
9分にPGで逆転すると(17-15)、14分には相手反則から好機をつかみ、FW陣が鋭さで紫紺を後退させる。最後はPR青木周太がゴールに入った(ゴールも決まり24-15)。
21分、明大にPGを許し18-24とされたが、後半中盤以降にまとまって動けていたのは明らかに慶大。全員で約束したラスト20分に自信は揺るがず、そのままのスコアでフルタイムを迎えた。
和田康二監督は、「最後は走り勝つと言って臨んだゲーム。それを体現してくれた。監督である私自身を熱くさせてくれたゲーム」と逆転劇を振り返った。
宮川主将は、記者会見に響き渡る大きな声で言った。
「人生の中でいちばん濃い80分にしよう。そう言って試合に臨みました。そして、最後は夢を叶えたいと思う心の強い方が勝つ、と」
気持ちで勝った。