ラグビーリパブリック

初秋の興奮。キヤノンのヤマハ撃破を呼んだ2ステージ制のチカラ。

2013.10.27

4トライ目を奪い、劇的にセカンドステージの上位組進出を決めた

キヤノンWTB原田季郎。(撮影/TAKASHI TAKASHIO)

 

 

 

 今季初めての敗戦。清宮克幸監督は悔しさを押し殺しながらも勝者を称えた。
「最後はキヤノンの方が勝ちたい気持ちで上回った」
 ゲームキャプテンの大田尾竜彦も試合中の実感を、こう話した。
「うちの田中(渉太/WTB)がロングゲインした場面がありましたが、次のフェーズで相手のディフェンスは揃っていた。戻りの速さに執念を感じました」

 

 キヤノンがヤマハ発動機を28-18で破った10月26日の秩父宮ラグビー場。2グループ、2ステージ制となって初めて行われている今季のトップリーグ。ファーストステージの最終節ならではの集中力も発揮され、試合は白熱した。

 

 

 前節まで、クボタと勝ち点で並んでいたキヤノン。得失点差でわずかに上回り、プールBの4位にランクされていた。セカンドステージを上位グループ(グループA)で戦うにはヤマハ戦で最善を尽くし、自分たちより1時間遅いキックオフで戦うクボタ(対コカ・コーラウエスト)の結果を待つしかなかった。できるだけ点差をつけ、4トライ以上奪って勝つ(勝ち点5)。それでダメなら…というところまでやり切るつもりで試合に臨んだ。

 

 64-101。夏合宿では大敗した相手に、赤いジャージーは覚悟を決めて挑んだ。決して完璧な内容ではなかったが、気迫が小さなミスなどカバーし、ヤマハの圧力をなんとか凌ぎきる。気持ちを前へ出してつかんだ勝利だった。

 

 前半7分過ぎ。FWのピック&ゴーからチャンスをつかみ、PR菅原崇聖がインゴールに飛び込んで先制。すぐにトライを返されるも、15分過ぎには攻められ続ける中でも決して崩されず、CTBティム・ベネットがインターセプトから走り切った。2PGを返されるも、前半を14-11で折り返した。

 

 後半は攻められる時間が長くなったが我慢し続けた。
 12分にSOカラム・ブルースのキックをべネットが押さえて追加点を奪うも、ヤマハの猛攻に自陣での戦いも多くなる。何度も防御ラインを突破され、トライラインに迫られた。21分にはCTBマレ・サウにインゴールに駆け込まれ21-18。ただ、そこから追加点を与えることはなかった。

 

 途中出場のアイザイア・トエアバが果敢に仕掛ける。全員が必死にタックルする。戻る。わずか3点差、3トライのまま…というプレッシャーの中でのプレーだったが、一歩も引かぬ姿勢を貫いたのが奏功した。
 試合終了間際。ヤマハがミスしたボールに集中力高く仕掛ける。ボールを足にかけ、体を張る。最後は、狭いスペースでも走りきれるキレ味が持ち味のWTB原田季郎がインゴールど真ん中に走り込んで4トライ目。28-18で勝利し、勝ち点5を手にした。

 

 クボタもコカ・コーラウエスト相手に4トライ以上の勝利を決め、勝ち点20で並んだ。しかし結果的に、セカンドステージを上位グループで戦えることが確定したのは得失点差で上回ったキヤノン。試合直後、クボタの結果が分かる前の段階で永友洋司監督は、「選手に感謝したい。最後まで攻め抜く意識を持てたことが勝因」と語り、「最後にトライを取りにいけるメンバーをリザーブに入れておいた」と戦略面でも読みが当たったことに頬を緩めた。

 

 和田拓主将は「できることはやった」と語った後、「こういう試合を毎回やっていくことが大事」と話してセカンドステージへの決意を込めた。ライバルの結果を受けて思いが通じたと知った1時間後、その決意はさらに強くなったはず。

 

 最高の集中力で臨む試合が、秋の初めにも訪れることになった2シーズン制のトップリーグ。新しいシステムがもたらした興奮が、セカンドステージの両グループで見られるか。そこに注目し、シーズンの深まりを楽しみたい。

 

 

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