MVPにも選出された東京都代表・横山健一主将。「来年は山形代表で(笑)」。
(撮影/松本かおり)
当然の選出だった。横山健一(リコーブラックラムズ)の名が読み上げられた。東京都のマスコット、『ゆりーと』も拍手をおくっていた。
さわやかな風も吹いていた9月30日の武蔵野市陸上競技場。今年から7人制となった東京国体(スポーツ祭東京2013)のラグビー『成年男子』では、全日程終了後にMVPが発表された。それが横山だった。決勝で43-28と愛知県代表に快勝。東京都代表主将として記念品を高々と掲げた。
文句なしの活躍だった。前日のプール戦、?グループを1位で通過した東京は決勝トーナメントでも快調に勝ち進む。そして迎えたファイナルの立ち上がり、猛攻の口火を切ったのが主将だ。
前半1分、快足を飛ばしてトライラインを越える。自らゴールも決めた。ハーフタイム直前にもふたたび快走、そしてゴール。前半を29-7と大きくリードする原動力となった。
そして、元セブンズ日本代表の勝負強さを見せたのが後半だ。愛知が意地の反撃。8点差まで差を縮めたときだった。キャプテンが防御を翻弄し、加速。この試合3つめのトライを奪い、勢いに乗りかけた相手を叩く(ゴールも自ら決めて36-21)。勝負を決めた。
絶対に地元大会で優勝しなければ。東京は横山以外にもトップリーグ所属選手を揃えた。NTTコムから伊藤拓巳、三浦嶺、西橋勇人。キヤノンから小笠原大樹、天野寿紀、藤本健友。東芝から茅野龍功。これに試合会場のある武蔵野市を本拠地とする横河武蔵野から、趙顕徳、福岡員正が加わった。
「協力していただいた各チームに感謝したい」
花岡伸明監督は、喜ぶ選手たちの姿を見つめながら言った。
「短時間で結果を残さないといけなかったチーム。横山のキャプテンシーが大きかった」
MVPの功績はピッチ上だけではなかった。
スペシャリストの経験が必要だ。そう考えた監督は、今回の東京都代表選手をリストアップするとき、真っ先に横山の名を挙げた。
横山自身が振り返る。
「チームが集合する前に監督と会い、話をさせていただきました。僕でいいんですか、と」
納得した横山は期待に応えるべく行動を積極的におこなった。自身の経験を話す。ピッチで指示を出す。
「選ばれた顔ぶれを見て、若いなぁと(笑)。少しびっくりしたんですが、言えば分かってくれた。理解力が高いな、と。(優勝も自分の活躍も)みんなの協力のおかげです」
集合してから、キャプテンがメンバーたちに言ったことがある。自分たちがこの場所にいる意味を考えてほしい。それを各々が胸に秘めて戦おうと伝えた。
「自分は『悔しい』と伝えたんです。トップリーグは続いています。それなのにここにいるのは、一時的であれ、そちらの戦いからは選ばれなかったということ。ここで結果を残さないと、自分のプライドを守ることはできないんだぞ、と。みんなだって、きっと同じ気持ちですから。分かってくれたと思う」
一戦ごとに結束が高まって、最後にはひとつのチームになった。キャプテンの呼びかけが一人ひとりの心をつないだ結果だろう。
閉会式が終わり、横山キャプテンは穏やかな表情で芝に腰を下ろした。
「来年も国体に出場するなら(出身地の)山形県代表で出たいですね。弟(伸一/リコー/元セブンズ日本代表)と一緒に。ふたり揃えば、(7人制なら)なんとかなるかもしれない(笑)。セコムの加藤(祐太/元セブンズ日本代表)も本籍地は山形らしいので誘おうかな」
やり切った男の顔をしていた。