若いチームに安定と安心を呼ぶ豊田自動織機CTB大西将太郎。(撮影/出村謙知)
11年目のシーズンを迎えるトップリーグが開幕。10年前の創設時からトップリーグでのプレーを続けてきたベテランが、新たな一歩を踏み出した。
開幕節、最後の1試合として組まれたTOYOTAダービー。少しだけヤマハ発動機時代を思い出させる、鮮やかなライトブルーのジャージに身を包み、相変わらずの体を張るプレーを続けたのは、CTB大西将太郎。ワールド、ヤマハ発動機、近鉄での経験を経て、今季、3年ぶりにトップリーグに戻ってきたシャトルズに加わった。
「外国人とのコミュニケーションもしっかり取ってくれるし、若い日本人選手たちを引っ張っていってくれる存在」(豊田自動織機・田村誠監督)
そんなリーダーシップを期待される大西は、12番の背番号をつけながらも、開幕戦の多くの時間帯を指令塔であるSOのポジションで奮闘した。
「今日に関しては、一番経験のある自分がめっちゃミスが多かった」と反省しきりだったとおり、キックチャージを受けてピンチを招く場面などもあった。しかし、常に相手のゲインラインに一番近い場所で体を張り続け、若いチームを鼓舞し続けたのも、この男だった。
「声かけることと、自分が体張って、みんなに何かを伝えること。それしかできない。ミスした分、そうすることで取り返そうと思った」
FB森田有希が早々と負傷退場した。トヨタ自動車が仕掛けてくるキッキングゲームへの対応なども考え、SOマーク・ジェラードが最後尾へ下がり、最前列で大西が体を張る。終了7分前まで18-6でリードするなど、間違いなく格上の相手を追い詰める原動力となっていた。
「ジェラードとのポジションに関しては、試合ごとではなく、時間ごととかプレーごとに入れ替えたりしてやっています。春から、コミュニケーションとりながら、そういうかたちで取り組んできたので全然問題はなかった」
試合自体はベテランの奮闘むなしく、最後の7分間に15失点。悔しい逆転負けを喫した(18-21)。
「新しいチームでの最初の試合。勝って終わりたかったけど、今日はみんな誇れるプレーをした。全部出し切って負けたなら仕方ない。次も今日以上のプレーをしていくことが大事。これからもそうやって出し切らないとチームとしての成長が見られないと思うし、まずは1勝を目指してやっていく」
大阪・花園ラグビー場の近くで生まれ育った。それだけに昨季までは、そのラグビーの聖地をホームグラウンドとする近鉄で現役を終えたいという気持ちが強かった。
しかし、成長過程にある若いチームの中でやりがいのある働き場所を得たことで、再び覚醒中。常に体全体で自分が持つエネルギー全てを表現していくような、「熱さ」を前面に出したプレーで再スタートを切った。
がむしゃらなベテランに注目だ。
(文・出村謙知)