毎年の開幕直前、本気の激突と最終調整をはかる東芝とサントリー。(写真/BBM)
真夏の夜のスペシャルカードは、意外なほど点差がついた。
2週間後に開幕を迎えるトップリーグ。そのプレシーズンマッチの中でもっとも注目された東芝ブレイブルーパス×サントリーサンゴリアスが行われた(東芝・府中グラウンド)。結果は31-16でホームチームの勝利。特に後半は完勝だった。
序盤はサントリーが優勢だった。FWの動きで上回り、敵陣に攻め込む。東芝がたまらず反則をおかすと、CTBニコラス ライアンがPGを2本決めた来させた。6-0とリードを奪った。
東芝が息を吹き返したのは25分過ぎからだ。試合後に和田賢一監督が「反則を繰り返し、相手にも悪かった」と振り返った立ち上がりを経て、防御と規律を強く意識。修正の意識がプレーに反映されてからリズムをつかんだ。
前半35分、その変化が得点を呼ぶ。勢いの出たFWが敵陣に攻め込むと、ラックからのボールをFB立川剛士がインゴールに持ち込んだ。
7-6と東芝が逆転し、主導権を奪い返して終えた前半。その勢いは後半に入っても変わらなかった。今季の東芝は、「FWとBKが交互にボールを持つのではなく、FWが勢いを持って前に出て、BKはしっかりポジショニングをとってから攻める」(和田監督)。その意識を実践に移し、リズムが出た。
後半6分、右タッチ際のスクラムから攻めた東芝は、ブレイクダウン後のボールをSOデイビッド・ヒルがインゴールに転がしてCTB増田慶介が抑える。修正したスクラムが相手にプレッシャーをかけたことも奏功し、18分には自陣ゴール前でコラプシングの反則をとられたサントリーの隙を突いてSH吉田朋生が飛び込んだ。28分にはラインアウト→モールでトライを追加。34分にはターンオーバーから切り返し、最後はスティーブン・ベイツが決めた。
31-9と大差が開いた後、サントリーも後半38分にトライを返しはしたが、東芝の快勝は揺るがなかった。
ゲームキャプテンを務めたNO8望月雄太は、「ことしは一つひとつ着実に、ステップアップしていけている感じ。20日の(Bチーム同士の)サントリー戦でも勝てたら、今年のチームのベクトルが正しく向いているかどうかが分かる」と語り、手応えをつかんでいるようだった。
一方のサントリー・大久保直弥監督の表情はどうだったか。「選手もだいぶ戻ってきて、いい方向にはなっている。残り2週間かけて仕上げていきたい」と語る表情からは焦りは感じられなかった。
ただ、散見されたミスには厳しい目を向けた。
「小さなミスが重なって大きな傷となった。出たミスは個人のミスであり、基本のミス。そして、それらのミスをカバーできない他の14人の問題でもある。もっとチームで継続して、そのあたりの修正に取り組んでいかないといけない」
SHフーリー・デュプレアをスプリングボクスへの招集で欠き、FLジョージ・スミスの合流もまだ。彼らが加われば、積み上げてきた個々の底力がガッチリ噛み合う自信があるのだろう。昨季もシーズン前までの不振を、開幕戦で払拭してから一気に突っ走った実績がある。
余裕はなくとも、これからの時間をどう使えばいいのか、何をやればいいのか分かっている。勝ち続けてきた者の財産は、そういうところで活かされそうだ。
(取材/見明亨徳)