強いスクラムでアメリカ代表を苦しめた日本代表。写真中央がPR畠山健介
(撮影:松本かおり)
ラグビー日本代表は24日、春シーズンのツアーを終えた。前日の東京・秩父宮ラグビー場では、アメリカ代表とのパシフィック・ネーションズカップ(PNC)最終戦を38−20で制し、9日間で3連勝という確かな成果を残した。特に、プレーの起点となるスクラムでは、元フランス代表HOのマルク・ダルマゾ スポットコーチの指導が実った。PR畠山健介は前向きだった。
アメリカ代表戦の後半12分、敵陣ゴール前で相手が反則を重ねる。この時ジャパンは、24−15と9点リードしていた。定石通りなら、ペナルティゴール(PG)による3点で着実に差を広げるところだ。しかし、FW陣の決意は固かった。何度もスクラムを選び、結果、ペナルティトライを奪った。反則がなければトライが決まっていたと、レフリーに認められたのだ。昨秋の欧州遠征のテストマッチ(国同士の真剣勝負)では自軍ボール獲得率10パーセント台と苦しんでいただけに、成長の跡が示された格好だ。
その場面の様子を、PR畠山は「押せそうだと思ってスクラムを選択した」と語る。
「相手は、こっちの(組み合う際の)距離の近さを嫌がっていた。だからそれまで、遠い位置から組もうとしていた。ただ、あそこ(トライ)はゴール前で相手もそれ以上は後ろに下がれず(日本代表と距離を取れず)、自分たちのやりたい距離で組めて…」
サントリーに所属のPR畠山は10年度、監督を務めていたエディー・ジョーンズ現代表ヘッドコーチのもと肉体改造に着手。「いまもいい選手だけど、もっとすごい選手になるには何が必要か? ボディーファットはいらない、と」。120キロ以上あった体重を110キロに落とした。そして12年度、筋肉量のみでの体重アップを目指し、チームスタッフと相談しながらウェイトトレーニングの時間を増やした。地道な鍛錬と、ダルマソコーチが伝授する「FW8人が低く一体となる組み方」。その両輪が、上手くかみ合いつつある。現在115キロのPR畠山は言う。
「バックファイブ(FW第2、3列)の押す意識が上がってきた。前3人(PRとHO)には、『相手がこう組んできたからこうしよう』という修正力が高まった。ダルマゾさんには『もっと自信を持て』と言われる。もっと、自信を持っていいとも思う」
日本代表は今夏、合宿を予定している。秋には2011年の自国開催ワールドカップを制したニュージーランドとの対戦を控える。
(文・向風見也)