引退会見で東芝の和田賢一監督と握手をする松田努氏(左)
(撮影:向風見也)
日本最高峰ラグビートップリーグ(TL)の現役最年長選手で日本代表43キャップ(国代表試合への出場数)のFB松田努が18日、所属先である東芝のクラブハウス(東京・府中市)で現役引退の会見を開き、「ラグビーをすることが好きだった。なぜかはわからないんですけど、好きなことをやっていたから時間も短く感じた」と語った。
出場機会のなかった今季終了後、和田賢一監督から来季以降の構想外であることを伝えられ、42歳での引退を決めた。当時の心境を振り返り、「覚悟はしていた部分はありますけど、未練たらたらという気持ちもありました。(構想外に関する)話をした後にFA宣言をしたんですけど、どこからも声がかからなかった。これ、冗談ですけど」。自身より2学年下の指揮官は、「日本ラグビー最大の功労者。いつまでも尊敬する。私がスタッフになってからも、言っていることを率先して理解して、実践してくれた。(今回は)苦渋の決断だった。正直、いまでも一緒にやりたい。ただ、今後を考えた時にこういう結論に至った」と語った。
埼玉・草加高から入部した関東学院大在学中、ストライドの大きな走りを長所に代表入りした松田。91年から4大会連続でワールドカップに参加し、93年入部の東芝では96〜98年度の日本選手権3連覇などに貢献した。「シーズンが終わると、もういいかな、と思ったりもするんですけど、しばらくするとまたラグビーをしたい気持ちが芽生えてくる」。03年度にスタートしたTLでは、リーグ最年長トライ(41歳9カ月5日)を記録した。
「おっさんになってから、メッセージのあるプレーをやってきたつもり。試合が終わった後とかに、『観てると元気をもらえる、中年の星だ』と言ってもらえた時は喜びを感じました」
今後は社業に専念する。「お世話になった方にはメールをしたんですけど、現役の仲間には何と伝えたらいいかと。引退するのは僕だけじゃないんで、自分の口からは報告できないまま。そうしている間にどんどん日にちが経って…。やっぱり、選手も噂とかで耳にはしたんでしょうけど、会った時もその話にはお互い触れない、みたいな」。19日の納会で、正式に挨拶する。
(文・向風見也)