ラグビーリパブリック

吹き続けるツクバの風 日本選手権初挑戦で見えた新たな道

2013.02.02


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SH内田啓介(中央)など、来季も筑波には楽しみな選手が多い
(撮影:松本かおり)


 


 


 濃密だった筑波大学のシーズンが終わった。心地よい風を吹かせ、初めて大学選手権のファイナリストとなった2012年度のシーズン。最後の試合は日本選手権1回戦でコカ・コーラウエストに15−47と完敗したが、試合後の選手たちの顔は晴れやかにも見えた。



 前半4分過ぎ、キックとチェイス、そしてキックチャージから相手の反則を誘い、SO片桐康策のPGで先制した。しかし、9分に自陣でのミスをきっかけにFLジョニー・ファアマトゥアイヌにトライを奪われて逆転を許してからは、コカ・コーラの接点の強さに本来の良さを持続できず。後半17分までに5トライを重ねられ、勝負を決められた(3−35)。



 その後さらに失点を重ねたものの、2トライを返した筑波大は、大学準優勝チームの矜持は示した。試合後に「多くの人は、『社会人相手に大学生が善戦したり、自分たちのスタイルを見せられれば』と思う試合かもしれませんが、自分たちは『絶対に勝つ』というモチベーションで臨んだ試合でした。そういう中で負けたのだから、それ以上でも以下でもない」と振り返ったのはFB内田啓太主将。落ち着いた口調でそう語ったリーダーは、さらに言葉を続けた。
「ただ、ボールを自陣からでも動かし、相手より多く走れたのはよかった。ディフェンスでもしつこくやれたとは思います」
 接点で受けた大きな圧力に耐えきれなかったことを悔やんだが、積み上げてきたラグビーへの誇りを感じさせる表情だった。
「サポートがはやければ(ブレイクダウンで)ボールも出せる。テンポを上げられれば防御に穴もあく」
 ピッチで体感したことは、今後も続く筑波ラグビーの指針となりそうだ。
 古川拓生監督は、初めて足を踏み入れた領域について話した。
「(大学選手権終了後から日本選手権までの)この期間を経験したことで、(来季以降日本選手権へ)目標設定において変わってくると思います」
 頭ではイメージできていた、もうひとつ上のレベルへの挑戦。それが、より具体的になった。新たな道ができた。これもまた、部の歴史の一部になる。



 4年間走りまくったWTB彦坂匡克の顔も晴れやかだった。
「思い切りチャレンジできて楽しかった、です。トップリーグでは、こういうチームとたくさん戦えるんですね(笑)」
 ツクバの風は来季以降もまた、いろんなフィールドで吹き続けそうだ。