大観衆のなかで行われたトップリーグ決勝。サントリーSO小野の前に立ちはだかる東芝PR浅原
(撮影:松本かおり)
サントリーが勝負の綾を見極めた。2013年1月27日、東京の秩父宮ラグビー場。日本最高峰ラグビートップリーグの上位4強によるプレーオフトーナメントの決勝を19−3で制し、今季無敗で2連覇を達成した。
9点先行の後半21分だ。サントリーは一時退場処分を受け、力勝負を好む東芝に自陣ゴール前でラインアウトを与える。こちらは1人少なく、相手は得意のモールで得点を狙う。向こうの思いが叶えば流れが変わるはずだ。だから、「そのラインアウトだけは絶対、取られない」とFL佐々木隆道。核たるFLジョージ・スミスが敵をタッチラインの外へ押し出し、危機を脱した。対するFL中居智昭は悔やむ。「(それまで)相手の(モールへの)反応が速かったので、前(で組む)のふりをして後ろ、と考えた。技の方に行った。力の方を出していれば…」。実はこの瞬間、東芝はいつもと違う思いにかられていたのだった。
サントリーは東芝の迫力にやや難儀し、それでも綾に敏感だった。敵陣トライライン直前での前半8分、相手ボールスクラムの脇からFL佐々木が飛び出す。「(スクラムを押しつつ)ボール(の出どころを)見る。ジョージに教えてもらって、1週間そればかり意識していた」。球の受け手へタックルし、サントリーに大好きな攻撃権をもたらす。最後は右の狭い区画に好機を見たFLスミスが、さらに右へパスする。「(広い場所に)行こうと思ってたけど、ジョージがいたから残っておこう、って」というWTB村田大志が、インゴールへ飛び込んだ。この先制トライが、後の決勝点となる。
自分たちの芯を信じる者同士がぶつかるなか、綾で勝敗が分かれた80分。下手な演出とは無縁であるべき、強者同士の営みだった。
(文・向風見也)