(撮影:見明亨徳)
後半11分、ハーフ線付近右のWTB山田章仁が前方へキック。「裏が空いているとずっと思っていたので」。守備網の背後を突く。CTB霜村誠一主将がカバーに戻る相手を封じ、FB笹倉康誉が球を抑える。ここでパナソニックが5点先行。しかし、東芝NO8豊田真人主将は動じない。「東芝のディフェンス、アタックをやり切ろう」。2013年1月20日、東京の秩父宮ラグビー場。日本最高峰ラグビートップリーグの上位4強によるプレーオフの準決勝は結局、20−8で東芝が制した。
22分だった。敵陣22メートル線付近右で、東芝は相手スクラムをタッチライン際へ押し込む。「僕どうこうではなく、全体で組めていた」と直前に入った左PR三上正貴。かねてからこだわるプレーの起点を圧倒したことは、後に好影響を及ぼす。攻めていた27分、向こうの守りを妨害したとして相手ボールスクラムで再開も、NO8豊田主将は「まだチャンス」と思えたのだ。「スクラムで勝っていると、相手ボールのものでもプレッシャーをかけられる、となる」。前向きな気持ちで迎えた29分、固いラインアウトモールの脇をSH吉田朋生が駆ける。東芝、逆転。直後のゴール成功で13−8とした。鍛えた面子をまとめて肉弾戦を制した和田賢一監督は、27日の決勝も「やることを明確にして臨む」。同じ地で、昨季王者のサントリーへ真っ向から突っ込む。
なおこの日、東芝は勝ち越し後も接点を分厚く援護する。ここで反則したパナソニックは39分、またもモールの餌食となる。綿密な守りと空間を射抜く攻めを得意としながら、失敗を重ねて原点に戻れなかったか。否、WTB山田は端的に話す。
「自分たちのラグビーはやりましたよ。ただ、相手の方が強かった」
(文・向風見也)
試合後、サポーターに挨拶する東芝の選手たち
(撮影:見明亨徳)