学生スポーツの大一番では、やはり最上級生が力を示す。決戦前日、後に勝つ4年のCTB荒井基植が言った。「積み上げたもの(の質と量は)は下級生にも、他のチームにも負けない」。2013年1月13日、東京は国立競技場での大学選手権決勝。卒業間際の黒子が序盤に流れを掴んだ帝京大は、筑波大を39−22で制す。史上初の4連覇を達成した。
「借りを返す意味もあるし、1年間ここを目指してきた。出し切りたい」。こちらも最終学年、PR出渕賢史の決意である。筑波大には前年12月1日、東京の秩父宮ラグビー場で10−24と敗戦。攻撃の起点たるスクラムで屈辱にまみれた。その最前列を担う出渕は「払しょくできるように」と芝の上に立った。結局、向こう側のHO彦坂圭克を驚かせた。「12月よりヒットスピードが速く、重かった…」。実は帝京大、課題だったスクラムを前に改善していた。正月2日の準決勝では皆がまとまり、早大の塊をPR出渕の側から押し込んでいた。いわゆる、ゲーム後に旨い酒の飲めるスクラムか。「いや、準決勝だったので…」。律儀にそう応じたPR出渕は、「目指してきた」地点での夜をどう過ごすか。
帝京大は接点も圧倒した。起点と接点に相手の視線を寄せれば、自ずとその周りに隙間ができる。結果、荒井が視野と判断力を活かした。
前半19分だ。自陣ゴール前スクラムからのボールを受け、「前が空いていた」と中盤まで前進。連続攻撃を促し、エースSO中村亮土のトライを呼んだ。後半10分には飛び出すタックラーの死角へ駆け込むランで、FL松永浩平の得点をお膳立てする。「一番、最高のプレーができました」と笑うのだった。
かたや敗者。WTB彦坂匡克が豪快に走るも、チームでその回数をより増やせなかったか。「流れ的にそういう状況じゃなかった」と本人は肩を落とす。戦中、悔やまれる采配はあったか。その問いに、古川拓生監督は守備の課題を挙げるのみだった。
(文・向風見也)
国立競技場で青春をぶつけた男たち
(撮影:松本かおり)
<第49回 全国大学選手権大会 全結果>
【ファーストステージ】
【セカンドステージ】
※ 勝ち=5点、引き分け=2点、負け=0点
※ 7点差以内の敗戦=1点
※ 4トライ以上を獲得=1点
※ 各所属リーグでの最終順位によるポイントが、セカンドステージスタート時から加算される。
そのアドバンテージポイント(A)は、地域所属リーグ戦:1位=4点、2位=3点、3位=2点、4位=1点
【ファイナルステージ】
◆準決勝(2013年1月2日/東京・国立競技場)
・早稲田大 10 − 38 帝京大
・東海大 26 − 28 筑波大
◆決勝(2013年1月13日/東京・国立競技場)
・帝京大 39 − 22 筑波大
優勝
帝京大学
(4季連続4度目)