内田啓太主将を中心に最後の調整を行う筑波大
(撮影:BBM)
スカイブルーのジャージーが躍動するのか。真紅の塊がグイグイ前へ出るか。前者なら初優勝。後者なら、なんと4連覇である。第49回全国大学選手権の決勝が1月13日、国立競技場で行われる。
初優勝を目指す筑波大は、帝京大と関東大学対抗戦で対戦したときには勝っている(12月1日/24-10)。あのときの試合は、水色のジャージーがタックル、タックル、またタックル。帝京ラグビーの生命線でもあるブレイクダウンで上回り、流れをつかんだ。ハンドリングエラーもわずか4つと、最高の集中力を発揮して大一番をやり遂げた80分だった。
試合から数日が経って、筑波大・古川拓生監督は言っていた。
「選手たちには、あの試合の勝敗のことは忘れよう。ただ、あの試合のイメージは忘れないようにしようね、と言っているんです」
同じことをやれば勝てるなんて保証はない。だけど、あれくらいの狂気でやらなければ再戦での勝利はないという思いを込めた。
大学選手権に入って、筑波大のディフェンスはどうか。
準決勝の東海大戦では4トライを許したが、その試合後にFB内田啓太主将は、「(BKのムーヴで取られたものは)あちらの精度が高かったと言うしかない」と言った。古川監督も「メンバーを変えて日が浅い分、コミュニケーションが足りなかったところはあるかもしれないが、崩されたものはなかったと思う」と振り返った。バックローのしつこさと、FW全員のハードワークは相変わらず。指揮官が「最高の相手と最高の舞台で戦える」と言った決戦では、その力を余すところなく発揮するだろう。
アタック面では、鋭いパスワークとタックルに定評のある片桐康策がSOに入り、ラインはよく動く。また、WTBにスピード満点、ダイナミックに動くルーキーの福岡堅樹が入って決定力はより高まった。FWが好球を配することができれば、帝京大自慢の防御にも混乱が起きるだろう。
対する帝京大は、ファイナルが近づくにつれ充実してきた。岩出雅之監督は決勝前日の練習で部員たちに、「準決勝のワセダ戦がベストゲームではなく、明日の試合がベストになるように出し切ろう」と言った。
「ここまできたら、(選手たちを)信じることが私のやるべきこと」
地に足がついた戦いで、赤黒のジャージーに何もさせなかった準決勝の80分。あの充実を超える予感が指揮官にはある。
ベストメンバーが万端で4連覇に挑む。前戦で足を痛めたNO8李聖彰は、スタッフらの献身で完全に回復した。選手権に入ってからはリザーブスタートとなっていた流大が先発SHに復帰。監督は「テンポを作ってくれる」と言い、波状攻撃の発信源と期待をかける。最初から最後まで、「相手がこわがっているところを出し切っていく」ための布陣。FWを軸にグイグイ前へ出る。相手の防御が前に出られない。つまりボールを持ち続ける。勝利のシナリオは明確だ。
ジャージー授与式では、名前を呼ばれた全員が大声で返事をして心意気を見せたが、もっとも大きな声だったのは、最後に呼ばれたHOの泉敬主将だった。
「気持ちが高ぶっていて、自然に(笑)。でも、誰もがいい顔、声でしたよね」
自然体で明日を迎えるリーダーは、全部員に言った。
「泥くさく、ひたむきに、死ぬまでやろう」
そして続けた。
「最後は俺たちが笑うんだ!」
司令塔の中村亮土は地元・鹿児島のテレビ局の取材も受け、軽快な動きと、ラインの核としてのリーダーシップも発揮していた。リザーブのSOには、入学してからの日々ですっかりたくましくなった朴成基(2年)が入った。ジュニア選手権などで力を積み上げ、日々の練習で信頼を得た男が最後の最後にメンバー入り。チーム全体の充実の証でもある。
頂上決戦は13時キックオフ。天気予報では悪くないコンディションでの試合となりそうだ。2012年度シーズンの大学王者は、間違いなく激闘を経て決まる。
決戦前日の帝京大。控え部員が見守るなか、試合メンバーが気合十分のタックルを見せた
(撮影:松本かおり)