(撮影:松本かおり)
年齢を重ね、メンタルとフィジカルのバランスが絶妙になった。落ち着いた表情だった。
「ほんとうのイチバンになりたいですね」
「トップリーグの歴史を振り返れば、田邉さんの方が上だと思うので」と語った後に続けた言葉だ。
ヤマハ発動機のFB五郎丸歩が2年連続で得点王、ベストキッカーに輝いた。1月6日、2012−2013シーズンのリーグ戦全日程を終えたトップリーグ。この日のリコー戦で11得点を加えた日本代表FBは、2位の田邉淳(パナソニック)に14点差をつける160得点を挙げた。キックだけで40G・25PGの155得点だった。
46−21と快勝し、リーグ戦での6位が決まったこの日の一戦。五郎丸は荒れたピッチの状況もあったのか、珍しく4本のプレースキックを外した。試合後に「いや、ピッチは関係ない。あれだけ外したのだから、理由は自分の中にあると思います。得意の右サイドからは今日もよかったけど、課題の左サイドからがやはりよくなかった。シーズンを通して成功率を70%後半から80%台にしないと」と語った得点王は、「目標に掲げていた2年連続の得点王になれたのは嬉しいですね」。そう喜びの声を発した後、昨季までの日本人プレーヤー最多の通算606得点(1度の得点王、2度のベストキッカーを受賞)の『田邉超え』を新たなターゲットとして口にした。
ジャパンの正FBとしての自覚だろう。責任とプライド、そして闘争心が、ナンバーワンを目指す心を支えている。上位チームに迫りながらも、勝ちきることはできなかった今季のジュビロ。その壁を乗り越えるために、「この1か月は怪我などを恐れず、ガチガチの、本当に激しいトレーニングをやってきた」と清宮克幸監督は言った。「そんな練習を乗り越え、競争を勝ち抜いて結局試合のピッチに立ったのは、それまで試合に出続けた選手たちだったんですよ」と続けた指揮官。五郎丸も、「もっと強くなりたいと思っている人間たちだと思います。試合に出続けたい、勝ちたいという強い気持ちがあるから、そういう結果になっている」と言った。自身、今季ここまで全13試合に出場。日本選手権で上位進出を狙う気持ちは高まり続けている。
「この先の戦い(ワイルドカードトーナメント/日本選手権)では僅差の中で(キックを)決めることが大事。そういうところで決められるようにしたい」
サントリーに6点差(29−35)、東芝に3点差(14−17)など、「今季大差で負けた試合は一度もない」(五郎丸)のは、チームの進化の証明。突き抜ける瞬間も、もうそんなに遠くないと感じている。