日本選手権出場へ望みをつなぎ、試合後安堵の表情を見せたNTTコム林雅人監督(右)と副将のFL小林訓也
(撮影:BBM)
試合後、近鉄のFB高忠伸はシャワーを浴び、着替え、暖房のきいた会見場に来てもまだ、震えている。2012年12月22日。日本最高峰ラグビートップリーグ第12節があった東京の秩父宮ラグビー場は、冷気と雨に包まれていた。
悪天候下で落球が続く一方、守りでは両軍とも前に出られた。近鉄4点リードで迎えた後半28分、NTTコムが敵陣ゴール前でスクラムを押し込み、攻め続ける。近鉄守備網の出足が鈍った、ここが唯一の場面のようだった。SO君島良夫のトライとゴールでNTTコムが逆転。13−10。続く38分、近鉄が相手の陣地へ深く攻め入りキックパスを放つも、後方から落下地点へ高く飛んだWTB小泉将が捕球、危機を脱す。
NTTコムは連敗を4で止め、10位以上を確定させた。シーズン終盤の日本選手権への出場をかけたワイルドカードトーナメント(WCT)の参加権を得る。「ディフェンスが好調の時に戻った」と勝った林雅人監督は言う。白星を重ねた序盤と同様のしぶとい勝ち方には手応えありか。
かたや、こちらも何とかWCTへの切符を貰った近鉄のFB高主将は、「身も、心も寒いです」。
(文・向風見也)