今季の関西大学Aリーグ4位の近畿大は23日、福岡・レベルファイブスタジアムで日本大(関東大学リーグ戦1部5位)との大学選手権セカンドステージ最終戦に挑む。16日、埼玉・熊谷ラグビー場で優勝候補の一角である明治大(関東大学対抗戦A3位扱い)に21−45と敗戦も、スクラムでは手応えを掴んだ。中核には、4年のPR山本幸輝副将がいる。身長181センチ、体重118キロ。卒業後は、日本最高峰ラグビートップリーグのヤマハ発動機に進む。
明大戦では、前半5分に敵陣10メートル線手前、後半12分には敵陣ゴール前でのスクラムを、ともにトライの起点とした。「エイトマン」という掛け声で、FW8人がまとまる意識を徹底した。3年時から先発定着の山本は「せっかく後ろの選手がスクラムに力を入れてくれるのに、(自分が相手に)負けたら話にならない」。相手のPR石原慎太郎に、「(山本は)後ろの重さを(相手に)伝えるのがうまい」と言わしめた。
「スクラムは(最前列の)PRが大事と思われがちですが、8人でまとまって組む意識が必要。エイトマンと掛け声をかけて、やらせてもらってます。(自分は)姿勢をしっかりする。後ろが押しやすいように、しっかりとお尻を突き出してあげたり」
全員でまとまる意識は、シーズン中に参加したヤマハでの体験練習で植えつけられた。元日本代表PRで通称『スクラム番長』の長谷川慎FWコーチに、「これまで自分が思っていたスクラムの形を覆されました」という。
「自分1人でヤマハ(静岡)に行って、皆さんの練習に混ぜてもらいました。それまでは個人的に勝つことしか考えていなかったのに、慎さんは『ここをこう変えたらこんなに押せるねんで』と。8人で組む意識、ということを仰っていました。それを近大にも持ち帰ったんです」
左投手としてプレーした野球に中学3年の途中で別れを告げ、ラグビーを始めた。八幡工高を経て同大入りも、各年代の代表とは縁がなかった。しかし山本は、将来の日本代表入りを強く希望する。
「ラグビーを始めた時からの夢ですね。今回、大学選手権で関東のチームとやらせてもらって、それをより強く思いました」
(文・向風見也)