ラグビーリパブリック

地方のプライド。大学選手権に歴史刻んだ朝日大、中央勢に挑む福工大

2012.12.03


kumamoto


雨のなかの激闘。大学選手権ファーストステージを制したのは福工大だった
(撮影:BBM)


 


 


 第49回全国大学ラグビーフットボール選手権大会のファーストステージ最終戦が、12月2日に熊本総合運動公園KKウィングで行われ、福岡工業大が44−7で朝日大に快勝した。九州代表の福工大は、関東大学対抗戦A、関東大学リーグ戦1部、関西大学Aリーグの各上位5チームとともに、8日から始まるセカンドステージに臨む。



 全国大学ラグビー選手権は今年度から大会方式を変えた。出場チーム数を昨年度の「16」から「18」に増やし、3ステージ制を採用。関東、関西の上位校が揃うセカンドステージへの1枠をめぐっては、地方のチームに競わせた。
 そのチャンスをつかんだ1校が、東海・北陸代表の朝日大だった。中国・四国代表(環太平洋大)との戦いを制し、全国大学選手権の歴史に力強い第一歩を残した。初出場、そして東北学院大(東北・北海道代表)から初勝利を挙げた。
 福工大には完敗した。悔しさに号泣する選手もいた。しかし、彼らの戦いぶりは堂々としていて、ノーサイドとなっての態度も清々しかった。
 「今日は、本当にすばらしい会場と、たくさんの応援のなかで、九州のチームと対戦できて嬉しく思っています。結果的には7−44と差が開いてしまったんですけど、この試合の意義は大きく、大変喜ばしく思っています」
 試合後の会見で、朝日大の吉川充監督は開口一番そう言った。
 「我々地方の大学は、一歩でも中央に足を踏み出してやろうと、日夜やっています。たぶん、九州も東北も切磋琢磨されていると思う。私がチームに関わらせていただいてから、ラグビーを一生懸命する子が本当に増えてきました。強い弱いにかからわず、生活の面からラグビーに懸けている学生が、このようなすばらしいステージで自分たちのラグビーをお見せすることができて、それだけでも感慨深い」
 指揮官の言葉を隣で聞いていた石原裕介キャプテンは、こう振り返った。
 「今までにない注目を浴び、こうやってラグビーができることにすごくびっくりし、感謝の気持ちでいっぱいの選手権、初体験でした」



 熊本でのファーストステージ最終戦は、雨だった。互いにアタックを強みとするチーム。朝日大の大型FWを警戒し、テリトリーを支配することに集中した福工大が、序盤に2トライを挙げ、主導権を握る。
 対する朝日大は25分、中盤からつないで敵陣深くに入り、ラック、展開、FWの前進を重ね、LO濱田壮志がゴールラインを越えた。
 しかし31分、福工大SO中村広樹が敵陣10メートルからダイナミックな走りで右サイドを突破し、インゴールに飛び込んだ。5分後、九州王者はゴール前ラインアウトからモールで押して、リードを広げる。
 朝日大はよくつなぎ、果敢に走ったが、福工大のタックルが何度も鋭く突き刺さった。その厳しいディフェンスは後半に入っても衰えることなく、朝日大が電光掲示のスコアを動かすことはもうなかった。そして69分、福工大は自陣22メートル内でのハードタックルからターンオーバーし、一気にカウンターアタック。サポートもよく、最後は副将のFL川久保大樹がチーム7本目のトライを挙げ、勝負を決めた。



 セカンドステージへの出場権を獲得した福工大の宮浦成敏監督は安堵の表情を浮かべた。
 「昨年は帝京大に6−96と大敗し、強豪に勝つことを目標にこの1年間やってきました。ファーストステージ突破で、九州代表としての責任は果たせたと思います。ファーストステージで2試合できたことは、選手たちにとってはメンタル的にプラスになると考えています。それに、試合間隔を空けずに次に臨める。これからが本番だと思っています」
 そのセカンドステージでは、苦汁をなめさせられた相手である帝京大(関東大学対抗戦A優勝:3校優勝のため得失点差で2位枠)や、立命館大(関西大学Aリーグ2位)、拓殖大(関東大学リーグ戦1部3位)と同じプールDに入った。
 九州を制したときに、「関東・関西勢も集うセカンドステージで勝つことが自分たちの目標です」と言っていた主将のFL下川兼典は、発熱により朝日大戦を欠場したため、副将のSH田代綱が代わりに力強く決意表明した。
 「九州の代表として、セカンドステージで何としても勝ちたい。自信がある、とは簡単には言いません。しかし、全力でぶつかる覚悟はできています」
 地方から勝ち上がってきた福岡工業大は、12月9日に大阪で、まず立命館大と対戦する。そして翌週に地元福岡で、4季連続の大学日本一を目指す王者・帝京大に挑む。