筑紫高校と福岡高校の魂のぶつかり合い
(撮影:Kiyoshi Takenaka)
冬の花園で全国4連覇の期待がかかる東福岡高校だが、予選突破は簡単ではない。今年2月の新人大会では、約3年間続いていた無敗記録を筑紫高校に止められた。5月の県大会準決勝では福岡高校と33−33で引き分け。そして昨日、4強の一角、小倉高校が王者ヒガシに襲いかかった。実力伯仲のこの4チーム、どこが勝っても不思議ではなかった。
第92回全国高校ラグビー大会の福岡県予選準決勝2試合が、11月4日に春日公園球技場で行われた。
激闘を制して決勝戦に駒を進めたのは、東福岡と筑紫だった。
ヒガシは小倉の猛追を止め、28−24で辛勝した。
ペナルティゴール(PG)で先制を許した東福岡だったが、前半12分、右WTBの力強いランで敵陣22メートル内に入り、FWが前進を続けて最後はキャプテンのNO8西内勇二がゴールラインを越えた。17分にもFWがパワープレーを見せ、2トライ目。
序盤のペースを握った東福岡がこのまま差を広げるかと思われたが、倉高の健児たちが踏ん張る。PGを追加したあとの27分、22メートル内ラインアウトからモールで押して、PR松岡大介がインゴールに飛び込んだ。直後のリスタートで東福岡はキックオフに失敗。中央スクラムでプレー再開後、小倉のBK陣がつないで一気にゴール前へ迫った。トライは奪えなかったもののPGチャンスをつかみ、左サイドの難しい位置からSO奥山弘太郎が決めて、14−14で前半を折り返した。
勢いづく小倉。後半開始直前、キャプテンのNO8秦啓祐が仲間を鼓舞する。「さあ2倍走るぞ、2倍!」
互いに、低く突き刺さるタックルを連発。見る側も熱くなる、中央付近での攻防が続く。10分経ってもスコアボードは動かない。
しかし13分、東福岡がFWのパワフルランで22メートル内に入り、FL丹下翔太のトライで均衡を破った。さらに6分後、前王者はゴール前でFWがピック&ゴーを繰り返し、途中出場の石橋海洋が飛び込んで追加点。28−14、東福岡の14点リードで残り時間は10分となった。
だが23分、ラインアウトからのモールドライブで小倉のPR松岡がゴールラインを越え、勝負の行方はわからなくなる。27分のモール前進ではグラウンディングできなかったチャレンジャーだが、試合終了1分前、再びゴール前で猛攻を見せ、HO古川祐也のトライで4点差に迫った。
時間はまだ残っており、ゲームは再開した。だが、東福岡は敵陣でのプレーをキープ。突破口を探した小倉だったが最後は見つからず、ノーサイドの笛が鳴った。
「十分、互角に戦えたと思います」と、惜敗した小倉、高野進監督の表情はスッキリしていた。その健闘は、スタジアムにいた誰もが認めるところだ。
「ウチは、モールは持ち味じゃないんですけど、頑張りましたね。よくタックルもしていたし、子どもたちは最後までよくやったと思います。もう少しボールを動かしたかったですけどね。東福岡のディフェンスが崩れないところを、無理に攻めてミスが生じ、切り返されるところがあった。勝利まであと一歩届かなかった要因には、経験値や判断力の差もあると思います。東福岡はゴール前のパワープレーでしっかり得点を重ねましたけど、僕らはゴール前で点を取り損なっていた。結果は負けましたが、最後まで勝負できたので、選手たちには『いいゲームだった。胸を張って帰ろう』と言いました。あきらめず、本当によくやりました」
勇敢なチャレンジャーをまたひとつ倒して、東福岡は前進する。勝った西内キャプテンは冷静に試合を振り返った。
「ディフェンスは最近、仕組みを変えたので、できていない部分があったんですけど、攻める方はFWでどんどんいって、継続プレーもできてよかったと思います。去年みたいに、慶和さん(藤田=現・早稲田大1年)のようなスターはいないので、その分、ひとりひとりが積極的に動いています。今年は新人戦で何もせずに負けてしまった。だから自分たちは、挑む気持ちを持って今年取り組んできました。いろいろ試してみて、2カ月くらい前からやっとチームとしてまとまってきたんじゃないかなと思います。決勝はタイトな試合になると思いますが、楽しみです」
準決勝のもう1試合は、後半を完全に支配した筑紫が41−15で福岡に逆転勝ちした。
筑紫のFL小林廉のトライで動き出したこのゲーム。17分に、ゴール前に迫った福岡がモールで押し、NO8末永健雄が抜けて追いついた。23分、敵陣10メートル過ぎの左スクラムから筑紫のサインプレーが決まり、キャプテンのFB井上尚馬が中央を鮮やかに突破してトライを決めれば、その2分後、福高は自陣深くでのクイックスローから左サイドを一気に破り、最後はFB高屋直生が走り切った。
前半終了間際に相手の猛攻をしのいだ福岡が、PG差で3点リードしてハーフタイムを迎えた。
ファイナル進出をかけたラスト30分の勝負開始。両チームは、ブレイクダウンでも激しくファイトした。
そして後半9分、筑紫がPGで同点に追いつく。さらにリスタート直後、筑紫BKが左サイドを突破して22メートル内に入ると、ゴール前のモールからPR倉掛湧生が飛び込んで逆転トライを挙げた。
流れを呼び込んだ筑紫は15分、敵陣10メートルでのラインアウトからモールで22メートルラインまで前進。さらに組み直して進み続け、HO小原昇大がグラウンディングした。勢いは止まらず、その3分後にはゴール前スクラムからNO8山崎翔太が抜けてトライ。BKも躍動して福高にプレッシャーをかけ続け、22分に14番が右サイドを突いて敵陣深くに入り込むと、最後はFB井上が押し込んで勝負を決めた。
攻撃を最大の防御とした筑紫は、後半をほとんど敵陣で戦い、相手に得点を許さなかった。
例年以上に厳しい練習を積んできたという筑紫の西村寛久監督は、気持ちを込めてプレーした選手の健闘を称えた。
「魂と魂の戦いになるから、そこで勝った方が勝つ、といって選手を送り出しました。しっかり実践してくれたと思います。ハーフタイムは精神的なことは言っていません。スクラムとラインアウト、あとはディフェンスのチェックだけ。そして、『逆転の筑紫』だから、後半頑張れと。後半はモールと展開をしっかり織り交ぜながら、選手たちは判断を間違えないでよくやってくれました。ディフェンスの練習にかなり時間をかけたので、成果が出てよかったと思います。決勝は、厳しい戦いになるのはわかっている。いつかこじ開けなければならない扉なので、頑張ります」
花園に行くのはチャンピオン東福岡か、それとも最強のチャレンジャー筑紫か。福岡県予選決勝は、11月10日(土)にレベルファイブスタジアムで、12時30分にキックオフとなる。
激闘後の東福岡と小倉の選手たち