トップリーグ挑戦1年目で勇ましく戦うキヤノン。昨季3位の東芝とも互角に勝負
(撮影:BBM)
この日、ブルーのジャージーを着た東芝の選手たちには、青ざめた瞬間があったかもしれない。フルタイムの瞬間にはヘトヘトだった。
走り回り、何度もタックルしたけど負けたキヤノンの選手たちには、大きな拍手がとどいた。昇格したばかりのチームが、あの東芝に15−21と食い下がった。よくやった。そういうファンが多くて当然だろう。だけど、敗戦後すぐに円陣を組んだ選手たちは、口々に悔しい、悔しいと繰り返した。
まだ入社2年目の和田拓主将は、記者会見で何度も言った。
「僕らはハードワークをやり続けることしかできない。でも、それができればやれると感じました」
そして、言葉を続けた。
「初めての勝ちも、初めての負けも、僕らにとっては財産になる」
永友洋司監督も言った。
「選手たちを誇りに思います。最後は経験の差もあり、東芝の気迫に勝ちきれなかったけど、それ以上に得られるものは大きかった」
先週の開幕戦ではNTTドコモに勝ち、この日は、巨大な壁に杭を打ち込んだ。積み重ねてきたフィットネスは嘘をつかなかった。「4次攻撃、5次攻撃となると、キヤノンの選手の方が先にブレイクダウンに入り、低かった」とは、東芝・和田賢一監督の評。初昇格チームがこの先も同様のパフォーマンスを継続できるなら、トップリーグはもっともっとおもしろくなりそうだ。
試合は、東芝の2トライで動き始めた。
前半16分、相手ゴール前で攻め立てた後、右に展開してCTB渡邊太生がインゴールへ。28分には、HO湯原祐希が密集をぶち抜いた。
キヤノンの意気が上がったのは31分だ。練習通り、大きくグラウンドを使った。FWが右端で鋭く前に出て、左にワイドに。WTB大居広樹がインゴールに飛び込んだ。直後の34分には東芝に1トライを追加されるが、それでも挑戦者の挑む心にブレはなかった。
7−21で始まった後半。キヤノンは走って走って、東芝をクタクタにした。
13分には、東芝がキック処理を誤ったところにつけ込んでCTB三友良平がトライ。22分には攻撃を重ねて反則を誘う。三友がPGを決めて6点差に詰めた。
後半は東芝を完封。キヤノンは、時間が経つほどに相手を運動量で上回った。しかし、それでも勝利を手にできなかった和田主将は、「負けは負けですよ」と明るく言い放って、先を見つめた。
「みんなのパッションを感じました。気持ちの落ちない15人が最後までいた」
若きキャプテンは、いま歩んでいる道は正しいのだと確信した。