南アフリカ・ラグビー協会は8月16日に理事会を開き、「サザン・キングス」の2013年スーパーラグビー参入決定を公式に発表した。2012年大会で最下位だったライオンズが降格となり、“トップ4”のストーマーズ、ブルズ、シャークス、チーターズは引き続き、2013年大会に出場する。
正式決定まで半年以上もかかる難産だった。南アラグビー協会は今年1月、東ケープ州最大都市ポートエリザベスに本拠地を置くサザン・キングスが、南半球最高峰舞台のスーパーラグビーに2013年から参戦することを発表。当初は、南ア勢を6チームに増やして“スーパー16”への拡大をもくろんでいたが、放送局やスポンサーとの契約上、2015年末までは現在の“スーパー15”フォーマットを変えられないとの理由で、大会を統轄するSANZAR(南ア・NZ・豪州の連合組織)のグレッグ・ピータースCEOに却下され、南ア第5のチームを決める入替のメカニズムが不明瞭なまま2012年大会に突入していた。
降格となるライオンズは、国内最大都市ジョハネスバーグを本拠地とする伝統あるチームだが、チーターズとの合同チームであったキャッツ時代を含めて、スーパーラグビーでは最下位6回のワースト記録を残し、2010年の会計報告では負債総額7億5000万円が明らかになるなど、財政状態は厳しい。スーパーラグビーから脱落したことにより、PRパット・シリアースやSOエルトン・ヤンチース、FBヤコ・タウタなどトップ選手が流出する可能性は高く、再建まで厳しい道のりが待っているのは間違いない。
一方、歴史的デビューが決まったサザン・キングスだが、課題は多い。国内地区代表のイースタン・プロヴィンス・キングスを母体にし、ボーダー・ブルドッグスとSWDイーグルスの優秀選手も合わせて構成されるが、いずれも国内2部リーグ所属のチームであり、トップ4チームとの力差が歴然であるのはもちろん、昨年の国内最高峰選手権(カリーカップ)を制したライオンズよりも実力では劣るといっていいだろう。また、反アパルトヘイト活動家と知られるダニエル“チーキー”・ワトソン氏を中心に、2005年から「黒人ラグビーの発展と黒人社会におけるラグビー人気拡大」を訴え続けてきたキングスがスーパーラグビー参入を決めた背景には、人種問題や政治色が強く、反発するラグビーファンが多いのは事実である。
そして一部メディアが、「南ア協会とキングスが4000万ランド(約4億円)で裏取引し、2016年までスーパーラグビー参戦を延期する密約を交わした」と報じたこともあり、決定プロセスが不明確だったことも課題として残った。そのため、2013年から2015年まで、南アではスーパーラグビー昇格・降格をめぐる入替戦(2回戦)を導入することが決定。毎年の南ア・カンファレンス最下位チームがラストサバイバルに臨むこととなり、ライオンズは早ければ2014年にスーパーラグビーへ復帰する可能性がある。