ニュージーランド北島のワイカト地方ハミルトンに本拠地を構えるチーフスが、2012年スーパーラグビー決勝で南アフリカのシャークスを破り、初めて南半球最強クラブの称号を手にしました。今季開幕戦はハイランダーズ相手に黒星を喫し、好スタートとはいきませんでしたが、レギュラーシーズンは12勝4敗の総合2位でフィニッシュし、プレーオフを見事に勝ち抜きました。
ニュージーランド勢としては初代王者のブルーズ(優勝3回)、最多7回も勝利の美酒を味わったクルセーダーズに続き、3チーム目の王座獲得です。また、エディー・ジョーンズ現日本代表ヘッドコーチが指揮を執っていた2001年にオーストラリア勢として初優勝を遂げたブランビーズ(優勝2回)、過去6年間で3度栄冠を獲得したブルズ(南アフリカ)、そして2011年大会覇者のレッズ(オーストラリア/1回)を含めると、大会17年目で6チーム目のチャンピオンということになります。
チーフスは2009年にも決勝進出を果たしましたが、そのときは敵地でブルズに17−61と大敗しました。3年後のファイナルステージはホームで迎え、シャークスを37−6で撃破。日本行きが決定していたCTBソニー=ビル・ウィリアムズ(パナソニック移籍)とNO8ケーン・トンプソン(キヤノン移籍)がともに惜別トライを決めたこともあって、ファンは大喜びし、激闘から2日後に地元で行われた優勝パレードも盛り上がったようです。
ソニー=ビル・ウィリアムズやアーロン・クルーデンといった新加入組に大仕事をさせ、LOブロディー・レタリックやルースFWサム・ケイン、PRベン・タメイフナといった20歳の若い選手たちをオールブラックスへと成長させたデイヴ・レニーHC(ヘッドコーチ)への評価も急上昇。彼は就任1年目でスーパーラグビーの頂点に立った最初の指揮官となったのです。U20ニュージーランド代表を率いてジュニア世界選手権3連覇を遂げたことがあるレニー氏は、イアン・フォスター前HCからバトンを受け取り、オールブラックスのアシスタントコーチとして2011ワールドカップ優勝を達成したウェイン・スミス氏を参謀につけ、チーフスで新たな歴史を作りました。
ただ、祝福ムードに水をさす事件も。快挙を成し遂げた夜、ハミルトンにあるレニーHCの自宅に泥棒が入り、妻の宝石などが盗まれてしまったのです。5月下旬にはソニー=ビル・ウィリアムズも自宅が空き巣被害に遭っており、試合日を狙った計画的犯行ではないかといわれています。
チーフス初優勝で幕を閉じた2012年のスーパーラグビー。安定感のあるキック力などで251得点をマークし、優勝に貢献したアーロン・クルーデンが初めて“得点王”に輝きました。トライ部門は、ブルズのWTBビヨーン・バッソンとハリケーンズ(ニュージーランド)のFBアンドレ・タイラーが10トライを挙げてトップ。王者チーフスの最多トライゲッターは、9度もゴールラインを越えたPRソナ・タウマロロ(トンガ代表)でした。
また、年内に現役を引退するウェスタン・フォースのLOナイサン・シャープ(オーストラリア代表)は、レッズ時代も合わせて前人未到のスーパーラグビー162試合出場を果たし、舞台から降りています。
最先端のアタッキングラグビーで、南半球だけでなく世界中にファンが多いスーパーラグビー。来年も、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカから計15チームが集まって行われる予定ですが、南アフリカ勢は一部入替が濃厚で、今季最下位のライオンズに替わり、南ア第6の勢力としてスーパーラグビー参入を長年訴え続けてきた「サザン・キングス」が新たな挑戦者になりそうです。放送局やスポンサーとの契約上、2015年大会までは15チームによって行われますが、2016年大会からはフォーマット再編が可能であり、スーパー16、もしくはスーパー18への拡大が噂されています。グローバル化も検討されていて、アルゼンチンやアメリカ、そして日本にもスーパーラグビーチームが誕生するかもしれません。
その前に、オタゴ(ハイランダーズの母体)のスコッドに選ばれた日本代表のSH田中史朗やHO堀江翔太(ともにパナソニック)、U19シャークスでプレーしている元高校ジャパンのWTB松島幸太朗(神奈川・桐蔭学園高出身)など、日本から飛び立って海外で挑戦を続ける選手もおり、南半球最高峰舞台スーパーラグビーで勇敢なサムライがいつか輝く日も、楽しみです。