8月23日に開幕するニュージーランド国内選手権「ITMカップ」だが、近年は収益の低下が大きな問題になっている。パナソニックワイルドナイツのHO堀江翔太とSH田中史朗がスコッド入りした名門オタゴが、財政破綻により消滅の危機にあったことは記憶に新しいが、世界大手の会計事務所『デロイト』の報告によれば、この5年間でITMカップの総収益は19%も減少したという。
2011年度、ITMカップに参加している14チーム(地方協会)は全体で、約6800万NZドル(約43億円)の収益を出した。2010年度は7700万ドル(約49億円)、5年前は8400万ドル(約53億円)だった。ちなみに、これらにはスーパーラグビーの収益は含まれていない。
ITMカップ収益の約3分の2が、ニュージーランド・ラグビー協会からの補助金やスポンサーなどからの支援金であり、チケット売上の低下は最大の懸念となっている。5年前に2100万ドル(約13億円)あった試合関連収益は、58%減少の900万ドル(約5億7000万円)にまで落ち込んだとのこと。
ただ、昨年は同国で世界的イベントのラグビーワールドカップが開催されたため、多くの国民がそちらのチケット購入にお金を回したとも考えられ、ITMカップは開催期間が短縮された上に、例年とは異なってプレーオフは決勝戦しか行われなかったことも影響したと思われる。
全体的な収益は減っているが、ほとんどの協会が経費削減などで努力しており、2010年に利益を出したのはわずか5協会だったのが、2011年は9協会に増加したという報告もあった。赤字合計は、230万ドル(約1億4500万円)から63万ドル(約4000万円)に減ったという。
南半球最強クラブを決める「スーパーラグビー」が長期化し(2月下旬〜8月上旬まで開催)、アルゼンチン代表の新たな参加で「南半球国別対抗戦」が拡大したため、国内最高峰選手権「ITMカップ」にトップ選手がフル参戦することはほぼ不可能になった。
しかしながら、地方ラグビーの活性化がオールブラックスの発展につながることは間違いなく、国民的スポーツの継続的な成功のためにも、各地方協会にはコミュニティ・サポートを構築するような革新的な策が必要だと『デロイト』社は指摘している。