NECのWTBネマニ・ナドロの腿に、パナソニックのHO堀江翔太がタックルする。前半6分だ。相手は身長195センチ、体重129キロ。7日前、埼玉の熊谷ラグビー場でキヤノンとの日本選手権2回戦で、大会記録を更新する7トライを挙げていた。
そんなキーマンを倒した26歳は、20分、2人の相手を蹴散らしゴールラインを割る。敵陣22メートル付近左のボール争奪局面にSH田中史朗が寄れば、さらに外際から球を呼んだ。パスを受けると、予めイメージしていたコースを迷わず駆けたのだった。
大阪は近鉄花園ラグビー場での日本選手権準決勝。前に出る守備とスペースを突く攻撃で、パナソニックが41−3で快勝した。このシリーズでの決勝進出を5年連続とした。試合は東日本大震災から丸1年という日にあった。いつもは明朗快活なCTB霜村誠一主将も、改めて無力感にさいなまれた。「日本の皆さんにとって重い日というか…」とは、田中の弁だ。皆、決意を新たにした。
常に白身魚の淡白さを貫く堀江は、「いつも通りっす」。2012年3月11日もあえて、美学に則りただラグビーをした。
18日、サントリーとの決勝戦に臨む。
(文・向 風見也)