ラグビーリパブリック

世界最高峰も舌を巻いた高速ゲーム サントリー×サニックス

2012.01.30

  「世界選抜のなかでやっているようなもんですから」とサントリーFL元申騎は笑った。サニックスに61−22で勝利した試合のマン・オブ・ザマッチ。ビッグプレーはなかった。しかし、80分間はきつかったと言いながら、一瞬一瞬を大切にしたプレースタイルに手抜きはなかった。12年目のシーズン。どこが成長しているかはあまりわからない。ただ、日々充実している。
  「110キャップのジョージ・スミス、アメリカ代表主将のトッド・クレバー、“走る冷蔵庫”のダニー・ロッソウ(笑)。こんなすごい選手たちと一緒にプレーしているんです。自分は才能はないですけど、その中で毎日懸命にやるだけですから」
 スター軍団は強かった。脇役もきっちり仕事をして、9トライの猛攻。


 


 『アグレッシブ、アタッキングラグビー』に磨きをかけるチームの指揮官、エディー・ジョーンズ監督は、気持ちを前面に出して真っ向勝負を挑んできた敵軍サニックスに敬意を表し、「ダニー(南アフリカ代表LO)と試合後に話をしたが、今までで一番速いラグビーだったと驚いていた」と苦笑した。「我々が求めていたラグビーができた。コンビネーションもよく、今日のパフォーマンスには満足している」。


 


 試合は前半4分、サントリーがFL佐々木隆道のトライで先制した。序盤の守りに粘り強さがなかったサニックスは14分にも相手FBピーター・ヒューワットにトライを許し、22分にはLOロッソウのオフロードパスを受けたSO野村直矢がインゴール中央へ走り込んだ。主導権を握ったサントリーは25分、ハーフウェイからCTBニコラスライアンが力強い走りで30メートル近くゲインし、すばやいサポートから最後はNO8クレバーがトライ。時間が経過するにつれて、ようやくタックルに激しさが出てきたサニックスだったが、FWのパワフルな突進とBKの速い展開で崩したサントリーは40分にもFBヒューワットがゴールを駆け抜け、前半を33−0で折り返した。


 


 すでに勝負はついていた。しかし、多くの地元高校生や熱心なサポーターが見守るホームゲームで、ふがいないプレーは見せられないサニックスはラスト40分間の戦いに力を振り絞った。サントリーのNO8クレバーが危険なタックルにより一時退場している間の後半50分、敵陣ゴール前での相手ボールスクラムでターンオーバーに成功し、右に展開してWTBカーン・ヘスケスがトライ。その6分後には、CTB小野晃征が22メートル内右奥から意表を突いたグラバーキックでボールを裏に出し、ヘスケスが確保して2本目を奪った。場内の声援も熱も帯び、息を吹き返したサニックスは60分、ゴール前のペナルティチャンスから果敢に攻めてPRシン・ドンウォンが飛び込んだ。


 


 後半に3本連続トライを許したサントリー。ゲームキャプテンを務めたPR畠山健介いわく、「ディフェンスのセットはできていたし、守りはそれほど悪くはなかった。しかし、サニックスのワイドで多彩な攻めに、受けに回ってしまった」。
 その直後、悪い流れを止めようと、ジョーンズ監督は4人のフレッシュレッグを投入した。層は厚い。目を覚ましたサントリーは、再起動に手こずらなかった。
 66分に途中出場FB竹本竜太郎がゴール前でディフェンダーを抜き去り、71分には視野が広い途中出場SHフーリー・デュプレアがインターセプトで独走。離されてもなお食らいついてくるサニックス(WTB濱里耕平)に4トライ目をねじ込まれたものの、ラスト3分間でSOトゥシ・ピシとPR池谷陽輔もゴールラインを越え、エキサイティングゲームを締めくくった。


 


 かたや優勝を争う常勝軍団。かたや下部降格の危機にある、屈せざる者たち。
 「地元で、意地は見せたと思います」と敗れた藤井雄一郎監督。
 「ファンに喜んでもらえるラグビーだったんじゃないかな」とジョーンズ監督。冗舌だったのは勝者だった。「サニックスとサントリーの考え方は似ている気がするね。いいゲームだった」。


 

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