0−14とリードされて迎えた前半終了間際、グラウンド中盤。大学界で指折りの突破力を誇る筑波大WTB竹中祥が、外側からフリーでパスを求めた。が、場所は公式で「16,377人」の観客が入った東京の国立競技場だ。竹中の声は全体には響かなかった。SO松下真七郎は、持っていた球をタッチラインの外へ蹴った。帝京大CTB南橋直哉は「(ボールを)回されても対応した」ものの、実際の出来事に「ラッキーという部分もありました」。2012年1月2日、大学選手権準決勝。帝京大は筑波大に29−3で勝った。FWの力と堅守で、筑波大の古川拓生監督の「動き勝つ」プランを崩壊させた。関東大学対抗戦Aの所属チーム同士とあって、筑波大も帝京大の長所を想定、「2人目(ボール保持者やタックラーへの援護)に焦点」を置いて対策を試みるも、「ボールは(有利に)出せなかった」と古川監督。そのためか。ハーフタイム前の動きに象徴されるように、敗者は冒険ができなかった。「トライまでのプロセスが見えていない」と、ある選手は感じた。
一方、帝京大SO森田佳寿主将は、「全員が我慢強くやり切れた」。8日、国立で、史上2校目の3連覇を狙う。
(文・向 風見也)