序盤、相手反則後はペナルティゴールで細かく点を刻まずラインアウトモールに挑んだ。NO8豊田真人主将によれば、「15人全体の思い」があったから。転がる球の真上にも、味方が敵に囲まれた地点にも、複数人で突っ込んだ。2011年10月30日、瑞穂ラグビー場。東芝がFW陣を中心に肉弾戦を制圧、トヨタとの昨季4強同士のトップリーグ第1節を36-15で制した。通常こうしたプレーにこだわると「退屈」と批判を浴びるが、この集団は例外だ。「FWで行く気持ちを全面に出せば躍動感が生まれる」と豊田は言い、前主将のWTB廣瀬俊朗は「ボールを動かそうという意識もあるから」と補足。「固執」ではなく「徹底」が、「退屈」ではなく「躍動感」を生む。
和田賢一監督によれば、「自分から身体を当てに行けたが、当てているなかでミスをしていた」。守備網が未整備だった隙を突かれ、後半2トライを奪われた。それでも「東芝のラグビーはどこも真似をしない。僕らしか作れないものを掲げていることに自信を持っている」と豊田。ただ自分たちの任務を迷いなく遂行した。結果、細部の綻びと敗北を繋ぐ糸さえも断ち切った。
(文・向 風見也)