2011ラグビーワールドカップは9日、ウェリントンで準々決勝第3試合が行われ、史上初の連覇を狙った前回大会チャンピオンの南アフリカは9-11でオーストラリアに敗れた。南アは安定したセットプレーとハーフ団の巧みなキック戦術などで7割以上を敵陣で戦いながら、ブレイクダウンでオーストラリアに幾度もターンオーバーを許し、トライを奪うことができなかった。
11分、南アフリカが自陣22メートル内でのラインアウトからボールを展開するも、ラックでオーストラリアがターンオーバーに成功し、主将のLOホーウィルが先制トライを獲得した。17分にはWTBオコナーのペナルティゴール(PG)成功でオーストラリアは3点を追加する。
前半、南アフリカはボール支配率55%、地域獲得率84%と優位に進めながら、オーストラリアがFLポーコックを中心にブレイクダウンで強さを発揮し、攻守を変えた。南アフリカが密集でのボール争奪で劣勢となったのは、その道のスペシャリストであるFLブルソーが負傷でベンチに退いたことも大きな要因に。21分、南アはゴール前5メートルでのスクラム後にFWが突進してゴールラインに迫るも、オーストラリアがラックでボールを争奪。32分と34分にも前王者は22メートル内に入るがまたしてもブレイクダウンでチャンスを奪われた。
39分に南アフリカはPGでようやく3点を返し、前半は8-3とオーストラリアがリードしてハーフタイムへ。
流れを変えたい南アフリカは49分、主将のスミットをベンチに下げ、実力で上回るHOビスマルク・デュプレッシーをグラウンドに送り出した。56分、南アはPG成功で2点差に。先発陣の平均キャップ数が55を超える経験豊富なアフリカの雄は、得意のアップ&アンダーでプレッシャーをかけ、またもや敵陣で優位に立つと、60分、SOステインのドロップゴールでついに逆転した。
窮地に追い込まれたオーストラリア。マイボールラインアウトはことごとく失敗し(獲得率61.5%)、司令塔のクーパーは硬さからかキック戦術とゲームディシジョンに精彩を欠いた。バックスの連係ミスもあり、チャンスメイクができない。
しかし72分、相手陣内10メートルを過ぎて千載一遇のPGチャンスをつかむと、WTBオコナーが確実にねじ込み、再びリードを奪った。
試合終了間際、なんとか敵陣に入り込んだ南アフリカだったが、PGとドロップゴールを警戒するオーストラリアの執念のディフェンスでパスが乱れ、ミラクル劇とはならなかった。
2011ラグビーワールドカップは準々決勝で敗退した南アフリカ。ピーター・デヴィリアス監督は退任が確実とみられる。試合後の記者会見で、代表監督としてのキャリアはこれで終わりだと思うかと訊かれ、「I think so(そう思うよ)」と短く答え笑って見せたが、会場は沈黙が支配したままで、隣に座ったスミット主将の表情はこわばったままだった。優勝以外は許されないラグビー王国のリーダー。テストマッチ111試合を戦った33歳のスミットもまた、この試合を最後にグリーン&ゴールドの代表ジャージーを脱ぐのは間違いない。
苦しみながらも準決勝進出を決めたオーストラリアは、ニュージーランド対アルゼンチンの勝者と16日に激突する。
(文・竹中 清/ウェリントン)