トンガにしても、日本は絶対に勝たなければならない相手だった。満員の17,364人を集めたノースランド・イベントセンター(ファンガレイ)には、開幕から変わらず熱い声援送る多くのトンガ人サポーターがいて、白星を届けたいと奮闘した。
「どの試合でもホームゲームのように感じることができて、どこに行っても赤色(トンガのチームカラー)を見かけた。彼らに恩返しができて嬉しいよ」と語ったのはWTBヴァイニコロ。強靭な肉体とボディバランスを武器に、後半54分に「自分のラグビー人生で最高のトライ」を決めた。
31-18、5年ぶりの日本戦勝利。ニュージーランドがフランスにボーナスポイント(4トライ以上、もしくは7点差以内の敗戦で1点獲得)を与えずに勝ってくれれば、10月1日の直接対決で史上初のワールドカップ8強入りもあり得る。
「(14日)カナダ戦の敗北は、我々45人(選手・スタッフ全員)だけでなく、サポーターたちも失望させた。しかし日本戦に向け、おそらくいままでで最もタフな1週間(トレーニング)を過ごして試合に臨んだ。ボーナスポイントこそ獲得できなかったが、勝つことができて最高の気分だ」と、マカ監督は選手の奮闘を称えた。
日本のスピードラグビー対策として、この1週間はディフェンス練習に集中。その結果、127本放ったタックルで失敗はわずか15本(成功率88.1%)と、ニュージーランド戦(82.5%)、カナダ戦(77.0%)から大きく改善された。タックル後のボール争奪への動きもすばやく、ブレイクダウンで強さを発揮すると、自分たちに有利なスローゲームへの転換に成功した。
「ハードなディフェンス練習の成果が出たね。日本にプレッシャーを与え、彼らのミスを引き出せたのが勝因だと思うよ」と笑ったのはSOモラス。しかし、獲得トライ数が同じ(3-3)だった試合で、彼のキック力もまた大きな武器となった。不調だった日本代表キッカーSOアレジとは対照的で、プレースキックを外したのは7本中1本のみ(成功率85.7%)。ゴールデンブーツが16点をチームにもたらした。
「タイトなゲームではキックの差で勝負が決まる。風も少なかったし、先週のカナダ戦前からこのグラウンドで練習できたから、それも好調の原因だったかもしれない」
一方で、課題が残ったのはラインアウト。ニュージーランド戦ではマイボール獲得率69.2%、カナダ戦では善戦したが、日本戦では50%と苦しんだ。また、流れを大きく変えるような反則はなかったものの、一時退場者を2人出しており、規律にはまだ改善の余地がある。トンガはラスト10分間の戦いが弱点といわれるチームだが、日本戦では最後まで足が止まることはなく、後半64分以降は得点を許さなかった。80分間、走り切れる体力はある。フランス戦は10日後、心身ともに最高の状態で決戦に臨むつもりだ。
「何よりも欲していた勝利を手にすることができた。まだ我々の戦いは終わっていない。フランス戦が楽しみだ」と、日本戦でゲームキャプテンを務めたHOルトゥイが語れば、マカ監督も鋭い眼光で力強く言った。「この勝利が大きな自信となって(プールA最終)フランス戦にいい影響を与えると確信している。世界ランク5位のチームに対し、失うものは何もない」。
(文・竹中 清/ファンガレイ)