世界ランキング1位と13位の差はかくも違うものか。優勝候補オールブラックスは、フランス相手に善戦したアジアの雄・日本代表を手玉にした。83-7、奪ったトライ数は13。NO8ヴィト、CTBノヌー、CTBスミス、WTBウィリアムズ…多くがブレイクスルーを連発した。日本のタックルミス、22本。
オールブラックスにしてはスローな立ち上がりだった。4分、ハーフウェイ付近のブレイクダウンでターンオーバーに成功すると、NO8ヴィトがブレイクスルーし、CTBノヌー、FBトエアヴァ、CTBスミスとわたり、最初のトライを挙げた。2本目を取るのに12分かかったが、それからはトライラッシュ。
ヘンリー監督は「日本は構成力に優れたチーム」と評しながら、「トンガほどフィジカル的に手強い相手ではなかった」と振り返った。ジャパンの武器はスピードだが、ならばとオールブラックスはテンポの速いゲームを意識し、FWからの速い球出しが若いハーフ団(SHエリス&SOスレイド)を助けた。トンガ戦と比べ、ブレイクダウンの改善も指揮官は評価。力量差が離れる日本との試合であり、どれほどチーム力がアップしたかを測るのは難しいが、才能豊かな選手が新たなポジションで可能性を開いたのは明らかなポジティブサインといえる。
この試合で、ソニー=ビル・ウィリアムズは後半から出場し、これまでのインサイドCTBではなく、初めて右WTBでプレー、2トライを獲得した。「選択肢が増えたね」とヘンリー監督。その他、カフイ、トエアヴァと複数ポジションをこなせる選手が好調をキープしており、選手層の厚さは出場20カ国中、文句なしのナンバーワン。
あえて不安材料を挙げるとすれば、故障はもちろんだが、SOのバックアップだ。背中を痛めている司令塔カーターに替わり、日本戦で「10番」をつけた23歳のスレイドは、序盤のプレースキックは不安定で、ノッコンもパスミス(小野澤のインターセプト)もあった。「ダン(カーター)ならしないようなエラーをいつくか犯してしまった。でも、自分はまだ若いし、まだまだ勉強中です」。幸いにも、SHウィップーがSOもカバーできるため慌てる必要はないが、大エース、カーターの復活をニュージーランド国民は待っている。
(文・竹中 清/ハミルトン)