毎年3月になると、香港から一段と賑やかな声が聞こえてきます。超一流のラガーマンと熱狂的なファンが世界各地から集まり、楕円球のダンスに酔いしれる「香港セブンズ」の季節です。IRBセブンズ・ワールドシーズのなかでも、最も権威が高い大会といえるでしょう。事実、他の7大会では出場数は16チームですが、香港セブンズだけは24チームが参加。唯一、3日間かけて開催され、獲得ポイントもアップしています。賞金総額は15万USドル(約1200万円)。カップ優勝チームには約800万円が贈られます。
1973年、香港ラグビー協会のミスター・ラグビー、故トッキー・スミス会長率いる香港7人制チームが、セブンズの母国であるスコットランドのボーダーズ地区で開催されたジェドフォレスト・セブンズとホイック・セブンズ両大会に出場したことから歴史は動き始めます。帰国したスミスは、香港でのセブンズ大会を夢み、3年後の1976年、キャッセイパシフィック・香港セブンズ大会の開催にこぎつけました。第1回大会には日本を含む12チームが参加。ニュージーランドのカンタブリアンズ・クラブが初代王者に輝きました。香港セブンズが24チーム参加の大会となってから、日本は1999年のプレート優勝が最高位です。
セブンズの戦いを通じて、スピードトレーニング、体のスピンとパスの技術、サポート方法など、多くの技術が15人制にフィードバックされるため、セブンズ出身のスター選手は数多くいます。1999年大会で伝説的独走トライを見せた大畑大介のほか、オールブラックスの英雄ではジョナ・ロムーやクリスチャン・カレン、豪州のジョージ・グレーガンに南アフリカのブライアン・ハバナ、アルゼンチンのアグスティン・ピチョットらも香港の舞台に立ちました。
香港セブンズは試合内容のおもしろさに加え、出場チームの多彩な顔ぶれも人気を呼び、ビール、ワイン、軽食、記念グッズの販売という観光都市香港ならではのノウハウ導入で、海外サポーターの誘致に成功しました。観客の大半が仮装パーティーさながらに着飾るのも今大会の特徴で、そのムーブメントは世界中のセブンズ会場で当たり前になりつつあります。一大スポーツ・イベントに育った香港セブンズは、もはやお祭りの場。1994年に改築工事を行い、4万人収容可能にした香港スタジアムですが、溢れんばかりの熱気です。あまりにも自由な夢空間であるため、18歳以下の立ち入りを禁止している観客席があるのも特徴的です。
2016年からセブンズはオリンピック正式競技となりますが、香港で築かれた伝統と文化は決して色あせることはないでしょう。いつかの春、あなたも香港に出かけてみませんか?